まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒント Vol.1(上)

「公務員=リスク」という、もやもやした不安への向き合い方を学びたい。

そのヒントを求め、城西大学の坂戸キャンパスへ。
鶴ヶ島市役所を同期トップで、部長職になられたにもかかわらず、早期退職された勝浦信幸さんを訪ねました。

<勝浦信幸さんのプロフィール>
城西大学経済学部客員教授
鶴ヶ島市役所在職中、福祉のまちづくりに関する政策の立案・展開に取り組む中で、多様な主体の協働・連携の必要性を痛感。
埼玉県内初の寄附によるまちづくり条例、市民協働推進条例等の策定、テレワーク実証実験、地域協働ポータルサイト構築などに携わり、地域イノベーションの推進に取り組む。
部長職を4年勤め、2011年3月鶴ヶ島市役所を早期退職。
主な著者
「地域発展の経済政策」(共著:創成社)、「無名戦士たちの行政改革-WHYNOTの風」(共著:関西学院大学出版会)など

住民と近い市役所の仕事はおもしろい!

ー 公務員生活30数年の中で、わくわくした仕事はありましたか?

区画整理の仕事は面白かったです。かなり自由にやらせてもらいました。
換地計画により土地が減ってしまう住民の苦情に対応する仕事でしたが、やりがいがありました。
低層住宅街へのマンション建設に対して、住民からの反対運動があった時期に担当した、建築規制の仕事もおもしろかったです。
建築規制のための要綱を作ったり、 住民への説明会を開催したり。

ー 大変なお仕事だと思いますが、ストレスはなかったのですか。

ありませんでした。
住民と業者の双方を納得させる仕事が向いていたのですかね。
住民に近い仕事でしたし。最初はけんか腰の住民の方も納得すると、そのあとのつながりができます。

ー 勝浦さんは、多様な主体による協働の必要性を早くからおっしゃっていましたよね。協働で様々な仕事を実施されているかと思いますが。

2000年頃、国がIT戦略として、誰でもパソコンが使えるよう、パソコン教室を全国各地で行いました。
当初、その事業を市役所のIT担当部署が企画してパソコン教室を行っていたのですが、高齢者には分かりにくく、大変不評でした。
IT担当部署の職員に、高齢者対象に分かりやすい講座をするように提案しましたが、実施にいたりませんでした。
そこで、自分の部署で、高齢者対象のパソコン教室を開催しました。
市は、老人福祉センターの場所を提供。パソコンはなかったので、民間企業から提供いただきました。講師は、定年退職をした地域のボランティアの方にお願いしました。

「人生100年時代」ブームの夜明け前に

ー 同期トップで部長職になられたので、副市長になられる可能性もあったのではないでしょうか。なぜ、早期退職をされたのですか?

職場の方の定年後の姿を見て、30代後半から退職後のことを考えていました。
農業か、家業を継ぐか、孫の世話しかすることがない。どれも自分には無理かなと。
何ができるか、何をやりたいかと。
大学の教員になるには、定年してからでは、年齢的に厳しいです。
本当はもっと早く辞めたかったんですが。

ー 今は、人生100年時代ブームですが、勝浦さんが30代の頃は、定年後を考える方って珍しかったのでは。

単純に老後が心配だったんです。
皆さんは、老後の心配をしないのかなって思ってました。
私は、肉体労働には向いてないし、頭を使う仕事をするしかないかなと。
40代半ばの高齢者福祉課長の時に、放送大学の大学院の一期生として入学しました。
大学院では、介護保険制度の分権性を住民自治の視点から考察して論文にまとめています。

公務員が書く「論文」って?

ー すごいですね。 課長職を務めながら、論文を書かれるとは。

官僚や首長でもなく、我々のような公務員が大学で職を得るには、論文の数が問われます。そこで、自治体学会やNPO学会などの学会に入ったり、大学の先生と共同研究するなどして、論文を書きまくりました。

ー 私でも論文を書けるのかしら?

中身のレベルを気にすると書けません。一生懸命に仕事をしたことであれば、ある程度、人よりは詳しいはずです。まずは、書いてみるべきではないでしょうか。

ー 「news zero」の前キャスターの村尾信尚さんとご一緒に本を出版されましたよね。

村尾さんが大蔵省(当時)在職中に立ち上げた、地域での行政改革を進める「WHYNOT」(「どうして? やってみようよ」の意)に参加していました。
村尾さんの活動が紹介されている新聞記事を見て、「協働」に興味があったので、すぐに、村尾さんに連絡しました。
村尾さんとの活動の成果として、仲間と一緒に本を作りました。私は、第3章の行政改革について執筆しています。
また、「WHYNOT」の地域版を作るために、「まちはみんなで作ろう」と呼びかけて、地元の市民の方や青年会議所の方と勉強会を始めました。
それから、青年会議所の歴代の理事長とのご縁は今も続いています。

地方公務員が、大学の教員になるには。

ー 今、お勤めの城西大学とは、どのようなご縁があったのですか。

市民生活部長時代に、市と大学との連携として、城西大学の授業の一コマを鶴ヶ島市の担当者が講義をしていました。
私は、そのコーディネート役でもあり、授業を担当することもありました。
それが、城西大学との縁の始まりです。

ー 今されている、大学の教員の仕事に繋がった、市役所の経験はありますか?

全部ですよ。
大学での講義の中で、市役所での経験を事例として学生に具体的に話をしています。
また、地域で課題を見つけるゼミでの活動や、「つるがしマルシェ」の開催なども、市役所での経験や人脈を活かして、学生たちにアドバイスしています。
今、大学は「地域連携」 を教員が行っています。しかし、地域とのネットワークを持っている教員は、あまりいらっしゃいません。
そこで、私は市役所時代に培った人脈が役立ています。

(つるがしマルシェとは)
https://www.josai.ac.jp/education/economics/index_4.html

下編に続く


〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
平日は、パッとしない公務員。土日は、「人生100年時代」の旅人。元気な100歳、『百寿者』を目指しています。まずは、健康第一。85歳までは、ほそぼそ働き続けたい。定年後、私ができる仕事は?人生100年時代、公務員の2大リスク「定年制」と「副業禁止」。その壁は壊さずに、なんとかよじ登ってみたい。登った先に、どんな景色が見えるのか?私の知らない景色を見ている、憧れの人生のセンパイたちを訪ねます。
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