『ぐるぐるゆるっと子育て@高齢出産』vol.11(上) いよいよ出産!!

こんにちは!かもみぃみるです。
連載開始から1年5か月め。いよいよ出産を迎えます。
→前号のvol.10はこちら

 

2006年の3月21日。前夜22時過ぎに父が亡くなったという知らせを聞いてから、私は計画分娩をするために産院に向かいました。

71才の誕生日を3日前に迎えたばかり。父の突然の訃報に混乱しながらも、この時の私はただただ赤ちゃんを無事に産むことだけに意識を集中するように努めていました。ほかならぬ出産でなければ、どんな予定があったとしてもすぐに実家に飛んでいったと思います。

入院後は検診を受け、夕飯を食べたら早めに就寝しました。

翌22日。いよいよお産する日を迎えました。

正産期範囲ぎりぎり。予定日だった3月12日(40週0日)の10日後です。
朝9時には治療室に移動して、陣痛誘発の点滴が始まりました。他にもう二人の妊婦さん。時折産科医と助産師さんが様子を見に来られます。かけつけてくれた相棒が付き添ってくれていました。

妊婦の緊張をとるために時折話しかけてくださるのですが、いつもは多弁な私なのに、この日はさすがに言葉少ない状態でした。

昼になりランチが供されました。
「さあ、これから大仕事に挑むのだから、しっかり食事をとって備えないとね!」
という医師の声に従って、自分を励ますような思いで完食しました。

午後。少しずつ地の底から湧き上がる地響きのような、波のような、大きな陣痛が襲ってきました。
赤ちゃんに会いたい。
早くこの手に抱きたい。
痛みが増し、間隔がだんだん狭まっていく中で、それまで抑えていた父への思いがあふれ出してきました。
一緒に遊んでくれたこと。家族で旅行に行った時のこと。楽しいことや美味しいものが大好きで、ジャイアンツの試合を見ながら晩酌していた父。笑顔や泣き顔、怒った顔が次から次へと浮かんできました。

私はこれから赤ちゃんを産む。
命を受けて生まれてくるこの子と同時に最愛の父を失うことになるなんて。
時を同じくして、親を失い、わが子を得る。
命ってなんだろう。なぜこんな状態で私は出産を迎えているのだろう。
哀しみとも嘆きともつかない。あれが慟哭というのでしょうか。

うわ言のように、「一昨日父が亡くなりました。今夜がお通夜で明日がお葬式なんです」とつぶやくと、医師が言いました。
「それは大変だ。つらいね。だけど大丈夫。明日のお葬式には出られるようにできるよ」と。
私は泣きながら言いました。
「実家に帰るには、新幹線で京都まで行かなくてはなりません」
すると先生は驚いたような、困ったような表情を浮かべながら、「それは無理だね」と。

心の中で何度も「お父さん、お父さん!」と呼びかけていました。
お通夜にもお葬式にも出たい。何よりももう一度父に会いたい。本当なのかな。会って顔を見てちゃんとお別れがしたい。

だんだん強くなる陣痛に耐えながら、その痛みよりも、父を失った心の痛みを強く感じながら、だんだん夕方が近づいてきました。
陣痛が強くなるにつれて相棒が腰のあたりをさすってくれます。

するとまた涙が込み上げてきました。

夕方5時。点滴開始から8時間が経過したところで担当医師がやってきて言いました。
「陣痛は数分間隔まで来ていて、子宮口も開いているんですが、肝心の赤ちゃんが下(子宮口)に降りてきていないんです。このままでは自然分娩は難しい。いくつかの方法があります。ひとつは人工破水させること。もうひとつはこのまま自然分娩に至るまで待つこと。そしてもうひとつは帝王切開です。私はこれから院長の意見を聞いてくるので、ご夫婦でも話し合ってみてください」と。

順調な妊娠期間で、自然分娩で出産することしか考えていなかった私には、青天の霹靂、混乱の極みでした。

ほどなくして担当医師が戻ってきて、「院長の意見は、妊婦さんの年齢や喘息という既往症も考えると、帝王切開が望ましいとのことです。私も同じ意見です。これ以上陣痛を長引かせると母体への負担と出産のリスクも大きくなることと、もしも新生児に何か問題が起きたときに、搬送する相手先の病院のスタッフも宿直状態になり、体制が弱くなるんです。母体と赤ちゃんの安全を優先するなら今、帝王切開に踏み切った方がいいと思います」と。

専門の医師ふたりにそう言われたときに、夫婦で顔を見合わせたものの、選択するという雰囲気ではありませんでした。「はい、わかりました。帝王切開でお願いします」
できれば手術は避けたかったのですが、赤ちゃんの命を守り、リスクを少しでも減らすことが最優先しての決断でした。

「それでは用意します。そこでもう一つ決めてください。帝王切開の場合、縦に切る場合と横に切る場合があります。横に切った方が回復は早くて傷跡も残りにくいのですが、あなたの場合は子宮筋腫が見つかっているため、のちのち開腹手術をする可能性があります。子宮筋腫の摘出手術の場合は必ず縦に切ることになるのですがどうしますか?」と。
「出産時に一緒に筋腫も摘出してもらうことはできないのですか」と尋ねると、「同時には無理です。出血量の問題と母体への負担。そして妊娠で大きくなっている子宮の状態ではできません」と。
お腹を十文字に切るところを想像しました。「縦で構いません。安全を優先してください」と次の瞬間に答えていました。

 

 

vol.11(下)につづく

 


<かもみぃみるのプロフィール>
1963年生まれ。41歳で結婚、42歳で出産した一人息子は現在中3。産後は体調を崩すなか、孤育てや介護、看取りも経験しました。音楽と踊りが大好きです。結婚までの、そして結婚後の様々な職歴と学びを活かして、数年前から女性の心身のウェルネスをサポートする講座やレッスンを行っています。「その人らしさを大切に。ゆるめること、ながめること、味わうことでよりよく生きる」を目指しています。

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