教えて!『無形資産』の築きかた」VOL.2(下)

『公務員』という生き方をしながら、『無形資産』を蓄えた、元上尾市役所職員で市民参加専門のまちづくり会社の代表の橘たかさんにその秘訣をお聞きします。「知りたい!『無形資産』の築きかた」VOL2(中)の続きです。

 

-公務員であったことが、今の仕事に繋がっていることはありますか。

ルールがあるからできませんではなく、どうやったらできるのか読み替えるのが公務員の能力だと思います。公務員は「前例」ではなく、「法令」で仕事をしています。法令をきちんと読みこんで趣旨を理解することが公務員にはできます。私は、行政の仕組みと市民の考えが両方分かることが強みだと思います。市役所を辞めて10年経ちますが、行政としてはこういうところはしんどいよねとか、引っかかるよねってところはあまり変わってないので、今でも公務員の経験が役立っています。

 

-以前、「カオスが大好物」との話をしていましたよね。

ハンズオン!埼玉の西川正さんとカオス(混乱)がないと、まちづくりは良いものにならないとの話をしたことがあります。真剣に取り組む中で、相手のフィールドや考え方の基本を知ったり、すり合わせをする中で混乱が生まれることがあります。その混乱の経験の先には、お互いをもっとよく理解しあえる関係が築かれるものだと理解しています。

一方、市民主体のまちづくりに関わる関係者の中には、これを取り違えてわざと混乱させることが良いのだと思っている方もいます。 軋轢を生むための混乱は凌辱なのではないかなと思っています。「合意なき摩擦は凌辱だ」と聞いたことがあります。確かに人を辱めるような行為が、素敵なまちづくりにつながるとはとても思えませんよね。ここの場で何を大切にするのか、最初に対話をすることが大事ですね。混乱は必要だけど、合意なく仕掛けられるものはよくないと思います。基本は、お互いが真剣に一緒に歩もうと取り組むもうとすること。それでも迷っている人たちがいて混乱している場は、まさに通訳である私の出番です。それが「カオスが大好物」って意味です。

 

-今チャレンジしていることを教えてください。

公務員と採用されてすぐに都市計画づくりの仕事をしていた時、マニアな市民しか参加していませんでした。商店街の活性化や地域のまちづくりでも、本音では関わってもいいかなと思いつつ、めんどくさいとか、入口が分からないとか、自分が参加するものではないとか思っているようでした。そんな市民の方の参画へのハードルをがんと下げるためにどうしたらいいかと悩み、その答えを探す中でワークショップや演劇的手法を取り入れてきました。これからは、もっと「うっかり」まちづくりに参加してしまうようなものを考えていきたいです。最近は、それがゲームではないかと思っています。「交通安全ゲーム」とか「商店街グループづくりのためのボードゲーム」とか。ゲームを作るところから参加型でやってみています。形作りの方は、そういうのを作れちゃう若者にお任せです。

あとは、「テーブルワークショップのためのお菓子ワークショップ」なんかもやってみています。

 

-「商店街グループづくりのためのボードゲームづくり」って何ですか。

商店街って世の中にたくさんあります。川崎市では商店街だけでなく、若手の商業者グループにもイベントなどの活性化に対して助成しています。若手はプロジェクトベースのイベントは得意なのですが、市の助成金を活用するための組織化だったり、説明資料を作ったりする経験をしている若手はあまり多くないそうです。このボードゲームは、飲み屋でたまたま出会った若手商業者同士が話し合いながら、ゴールを目指すストーリーのゲームです。現実に話し合いながらゴールまで進むと、団体の組織の書類やミッションや内容が詰まった説明資料ができちゃうんです。

 

-なんか、やりたくなりますね。「テーブルワークショップのためのお菓子ワークショップ」ってなんですか。

ワークショップの時に、場を和ませたり、コミュニケーションのツールとして、テーブルにお菓子を置きますよね。このワークショップでテーブルに用意する「お菓子」に注目したら面白いかなぁと考えました。もっと参加者の属性や求める成果によって、真剣にお菓子を選んでもよいのでは。 例えば、都市計画で合意の取れていない緊迫しているワークショップとか、初めての参加者の多いワークショップとか、いろんなワークショップの場面設定ごとで、その場面に合うお菓子をみんなで考えています。ワークショップの区分けって難しいんですけど、お菓子ならできるかなと。まずは同業のコンサルタントの皆さんと始めています。 冊子とかのコンテンツにしたいですね。行政やNPOの方がワークショップなどを企画する時に、お菓子を入口に楽しく市民参加のことを考えてもらえると、参加者にも伝わるかもしれないなんて考えています。とにかく参加の入口を面白くすることをしたいんです。

 

-今、コロナウィルスで自粛生活ですが。

都内に住んでいるんですが、今まで平日も休日も街角に昼間は人があまりいなかったんですが、今、街に人がいます。例えば、お散歩の時に距離は取るけど、きちんと挨拶するとか、改めて小さなローカルなコミュニティの関係を築くときなのかもしれないなぁと思います。ある意味チャンスと思ってやっていくしかないのかな。

あとは、オンラインでつながることが普通になりましたね。もちろん直接会うことができないことで離れてしまっている関係もあります。距離がなくなったことで近くなった関係も増えました。

ふたこビール関連で、週に2回乾杯練習会という企画をやっています。40分という短い時間、みんなで乾杯するというだけの企画です。これも新しいコミュニティづくり、場づくりの一つなのかもしれないと思い始めています。

 

-公務員のこの先へ、一言お願いします。

行政の仕事ってすごく幅広いのに、ふだんの仕事だと小さく見えてしまいがちです。仕事をしている時に、もしも仕事の意義や方向で悩んでしまうようなことがあったら、それは幅広く見る機会が少なくなっているのはないでしょうか。役所での位置、地域の経済や産業など地域社会での位置、日本国内での位置と見る範囲を広げてみる。私の場合は、市民と関係しない公共の仕事はないことを改めて気づいたりしました。 仕事に悩んだら、「社会の中でこの仕事がどの位置にあるのか」という視点で、自分と自分の仕事の位置を見直してみてください。何か新たなヒントが見えるかもしれません。公務員の方が悩む時は、きっとそんなことではないでしょうか。

 

宇宙(そら)の無形資産帳簿

久しぶりに橘さんとじっくりお話をしました。見た目も生き方も行動力もすべての魅力が20代の頃とまったく変わっていませんでした。出逢った時のキラキラした印象そのままです。勉強会で公共のあり方を語り合った橘さんは、役所を離れた今も、役所と市民の間で、翻訳者「橘たか」としてきりりと立ち続けています。平日は役所に身を置きつつ、土日は市民に戻る日々の私には、橘さんが20年で積み重ねてきたものの魅力が眩しかったです。

インタビューの中で何度も「うっかり」というキーワードが何度も飛び出しました。公共の場に一人でも多くの人が関わる場にする仕掛けを常に考え続けている橘さんの想いが伝わるキーワードですね。橘さんの魅力に「うっかり」引き寄せられた一人として、橘さんがこれから何を生み出すかワクワクしています。

 


〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
まんなか世代の公務員。
元気な100歳、『百寿者』を目指しています。
健康第一、85歳までは働き続けたい。
定年後、私ができる仕事はなんだろう?
人生100年時代、貯蓄などの有形資産はもちろん、お金に換算できない、友人関係や知識、健康などの『無形資産』を蓄えていきたい。
『公務員』という生き方をしながら、『無形資産』を蓄えている方にその秘訣をお聞きします。

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