知りたい:ホームヘルパー国家賠償訴訟「住み慣れた地域で暮らす」に欠かせない仕事の劣悪な条件に声をあげる

知りたい:ホームヘルパー国家賠償訴訟「住み慣れた地域で暮らす」に欠かせない仕事の劣悪な条件に声をあげる

日本が「高齢化社会」に突入して50年。その後も高齢化はすすみ、いまや「人生100年時代」となっている。そこに欠かせない訪問介護員(ホームヘルパー)として働く人々の状況が「きわめて劣悪」であることが、いま当事者である3人の女性による訴訟という形で明らかになりつつある(古川晶子)


100年とはいわないまでも長引きそうな老後だからこそ、施設などではなく住み慣れた自宅で暮らしたいのが人情。近頃「エッセンシャルワーカー」などと言われているが、言葉で持ち上げられる前から介護の手は不可欠だ。2000年から介護保険制度に組み込まれたホームヘルパーは、利用者の自宅を訪問して食事、排泄、掃除や洗濯などを行う。人が日々、生きていくために、誰かがやらなければならない、途絶えればそく命にかかわる仕事で、利用者一人ひとりの事情に合わせて工夫が必要なことも多い。また、利用者や家族とのコミュニケーションに細やかさを求められる一方で、大人の体を支えるなど、物理的な重労働もある。

ホームヘルパーへの要求内容はこれほど高いにもかかわらず、労働条件はありていにいって劣悪だ。求人は多いがほとんどが非正規雇用で、収入は低く不安定である。収入が低いのは、移動や待機、報告書の作成などの拘束時間が労働時間に含まれないためであり、不安定なのは、介護サービスは内容によって利用料が異なるが、ヘルパー側が提供するサービスや勤務日や勤務時間を決めるわけではなく(それどころか急に変更されることも多い)、またキャンセルとなる場合には支払いがないことによる。

こうした現状に、2019年11月、3名の現役ホームヘルパーの女性が国を相手取って訴訟を起こした。原告の藤原るかさん、伊藤みどりさん、佐藤昌子さんは、それぞれ別の事業所で働くホームヘルパーで、かつ、書籍や社会活動などで介護労働者の現状について発信してきた。しかし、問題が解決されるどころかさらに悪くなるような法改正や制度変更が度重なるのを目の当たりにして、ついに提訴するに至った。訴状では、原告の労働基準法上の権利の侵害、精神的損害などにたいする賠償を求めるが、それと同時に介護労働者すべてに影響する法と制度の不備を明文化している。

公判日程は、現在、新型コロナウイルスの影響で延期されているが、この期間を利用して「ホームヘルパー・アンケート」を行い、当事者の声をさらに集めている。「人生100年時代」、誰にとっても他人事ではない介護にかかわるこの訴訟に注目していきたい。

ホームヘルパー国家賠償訴訟(裁判の最新情報や「ホームヘルパー・アンケート」を掲載)

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