まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒントVOL.12 4/4

「公務員=リスク」という、もやもやした不安への向き合い方を学びたい。
そのヒントを求め、東京都小金井市役所の堤直規さんにお話を伺いました。
まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒントVOL12  3/4 の続きです。

 

-最近、公務員で活躍していた若手が次々と退職されていますね。

これまでの公務員は1割も辞めませんでした。民間では3割くらいは転職しますから、自分なりの働き方や人生を考えて転職することはありだと思います。

35歳くらいで辞めちゃって、もったいなあと思う人も私から見るとたくさんいます。公務員の世界は一言でいえば「理不尽」です。その理不尽の中でも、少しでも市民の暮らしと地域や自分の人生の豊かさのために頑張れる人がいてもいいと思うんです。自分が公務員として何かを培ったとか、やり遂げたわけたのではなく、別の職業に移っただけですと、本人の人生が深まるという意味ではあまりよくないのではないかと思っています。

 

-そうですか。

公務員って、人知れず自分を錆びさせる職業です。なんとかなっちゃうので。40代で活き活きと働く公務員って少ないように思います。やりたい仕事をやった結果としての40代ではないからではないでしょうか。だんだん仕事がつまらなくなるし、周りから見るとどんどん使えなるだけになってしまいます。僕の本の共通点ですが、自分を錆びさせないためには自分を磨くしかないですね。ある勉強会で、元平戸市役所の黒瀬啓介さんの強烈な姿を見て、自分なりには錆びないようにやってはきたつもりだけど、「自分は錆びついてるな」って思いました。黒瀬さんを見て「最近の若い人は」という言葉だけは言わないようにしています。誰もが黒瀬さんにはなれないけれど、自分にはなれるはずですから。

 

-確かにそうですね。

公務員に向いているかをよく考えないで、公務員になっている人も多いと思っています。自分の職業に目覚めて、公務員を辞めて転職するのはいいと思うんです。「昇進しても情報が増えるだけで給料は増えないからね。」と若い人には言います。年収を成果と思っている人には公務員は向かない。安定と引き換えの年功序列なんですよ。年が上で人柄が良いだけで、力のない上司に使えるということがあっても、それは公務員という職業と一体です。公務員を単なる安定と考えて就職した人には、今の時代の曲がり角で公務員をやるのはつらいでしょうが、曲がり角の時代こそ、公務員は必要な職業なんです。

 

-必要な職業ですよね。

若手が、公務員としての面白さを知る前に辞めてしまうのは残念です。公務員って教え合うのが当たり前じゃないですか。企業機密の壁が高い民間企業じゃありえないです。公務員は、特段の才能がなくても、考え方や気持ちが前向きで、自分を磨く気持ちがあれば、吸収したり、助けをもらって必ず人に役立つことができます。こんな仕事っていくつもないんじゃないかな。発明をしたいとか、独立独歩に行きたいという方には組織の壁があるかもしれません。けれど、僕も結構好き勝手やっているように、組織の中でも泳ぎ方はあります。そのためにはある意味、人間としての成熟やバランスが必要となります。

 

-公務員のこの先、一言お願いします。

公務員という職業は、仕事が人生になって、人生が仕事になって、仕事を作っていける豊かな職業だと思います。時代は曲がり角で、僕らの働き方も大きく変わる時です。自分のやりたいこととできることは、分からないなりに考えながら前に進んでいく。ご縁を大事に自分なりの働きをする中で、納得しながら働けるようになっていくんだなって実感しています。それが自分らしい働き方なんです。僕は「ザル」と呼ばれるぐらい事務力が低いので、たとえば会計の仕事は向いてないのですが、先が見えない企画みたいな仕事は苦にはなりません。逆に、答えが見えない企画みたいな仕事は不安にしかない人もいます。そういう中でも自分なりに働いていれば、人事や上司も見ているので、自分らしく働けます。そうすれば、仕事と人生が自分なりに豊かになります。

 


 

宇宙(そら)の旅日記

「小金井市が面白い(課題がある)から公務員になった」という、堤さんの小金井市への溢れるほどの熱い想いには圧倒されます。堤さんのこれまで歩まれてきたキャリアは、クランボルツの「計画された偶発性理論」を体現しています。数々の偶然の出来事のたびに最善を尽くし、自分の可能性をどんどんと広げてきました。「計画された偶発性理論」の5つの行動指針である「好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、冒険心」をまさに実践され、偶然の出来事を糧にされています。

ご自分のことを、何度も「仕事ができない」「優秀でない」と評していました。謙虚に最上のものを目指し続ける厳しさの裏返しの言葉だと思います。堤さんが上の世代の方の懐に入って教わってきたことを、職場だけでなく、本を通じて多くの若い人へ伝えたいという想いも満ち溢れています。全国の公務員が堤さんに魅了されているのも納得です。現役の公務員として、実名で仕事術の本を出版し、仕事を通じて日々実践し続けています。その状況をプレッシャーと感じることなく、面白がっているところが常人ではありません。

「無原則の異動」が宿命の公務員が、いかに自分らしくキャリアを築いていけるのか。「自分の仕事を意識して工夫、改善していれば語れるものがあるはず」「どう『世に出る』か、日ごろからよく考える」など、数々の堤語録を胸に秘めつつ、堤流のしたたかなチャンレンジ術を身につけていきたいです。

 


〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
平日は、パッとしない公務員。土日は、「人生100年時代」の旅人。元気な100歳、『百寿者』を目指しています。まずは、健康第一。85歳までは、ほそぼそ働き続けたい。定年後、私ができる仕事は?人生100年時代、公務員の2大リスク「定年制」と「副業禁止」。その壁は壊さずに、なんとかよじ登ってみたい。登った先に、どんな景色が見えるのか?私の知らない景色を見ている、憧れの人生のセンパイたちを訪ねます。
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