まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒントVOL.12 2/4

「公務員=リスク」という、もやもやした不安への向き合い方を学びたい。
そのヒントを求め、東京都小金井市役所の堤直規さんにお話を伺いました。
まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒントVOL12 1/4の続きです。

 

-本の構成はどのように組み立てるのですか。

構成は緻密に考えず、大雑把に組み立てます。章立てとポイントを2つか、3つ整理したら書き始めます。企画書では、伝えたいメッセージや競合する本とどう違うのかを意識しています。

 

-次はどのような本を出版される予定ですか。

若手・中堅は、若い人を教える中で脱皮できるのだと思っています。30歳前半の人が自分では仕事ができるとは思っていても、チームをまとめる中堅役割を期待される時に壁にぶつかります。ちょっといい感じの若手が、中堅になるのはそれなりに大変なことなんですよね。僕は「中堅の壁」って言葉をよく使います。公務員は年功序列なので、必ず「中堅の壁」に直面します。新人・若手育成と、その中で自分自身もどう成長するか、やりがいを育てていくかといった内容を考えています。

もうひとつは、小説仕立ての若手職員向けの公務員のキャリアの本を依頼されているんです。いわゆる「地域で飛び出す公務員」。素晴らしいですが、たとえば、税や福祉のことしか知らない若い人には必ずしも響かない部分があるのではないかって思っています。一つの仕事しか知らない若い人が昇進の壁にぶつかった時に、役立つようなマネジメントや生き方の本にしたいですね。

 

-ほかにも本の企画はあるのですか。

キャリアコンサルタントになってみて分かったのですが、欧米、民間ベースのキャリアコンサルタントの理論では、公務員のキャリアを理解するのは難しい面があると思っています。公務員には「無原則の異動」が待っているので、自分がこうなりたいと思っても、そうならないんです。いい意味でキャラ立ちをして自分ブランドを作って、それを上司が煙たがったとしても食い込みながら、自分の立ち位置をどう作るかってことが大事です。そうじゃないとパージされてしまいます。子育てとか地域とかの人生が仕事になって、仕事が人生になるのが公務員の豊かなところです。

 

-一人ひとりの公務員が自分のキャリアを考えていくってことですね。

キャリアについて、人事はやや慎重ですよね。個人がキャリアを考えると、どうしても勝手なこと言う人が増えると思うのかもしれません。コロナ禍以前の状況でいうと、公務員志望は減ってきていました。これからは、女性とか、いろんな働き方の中で能力を活かしていきたい人を採用していく必要があります。今まで以上に、職員一人ひとりの「やりがい」「使命感」が大事になってくると思っています。

 

-これからの公務員の仕事も変わりますよね。

AIの発展で、事務仕事しかできない公務員は間違いなく不要になります。地域課題を解決するという、本当の意味での公務員が必要となるはずです。少なくない若手が安定しているからという理由で公務員になっているように思います。人としてはとても良い子たちばかりですが、変化に弱い人たちです。この先も勉強せずに変わらないままだと、40、50代の時には彼・彼女らの仕事はなくなります。僕は小金井の街を良くしたいので、街を良くする公務員を増やすためにも、悩み抜いても何かを伝えたい、残したい、そんな若手に響く本を出していきたいと思っています。

 

-新たな公務員本ですね。

公務員の働き方、生き方の本はまだまだ足りないです。公務員の本って、今、第三世代だと思っています。大学の先生が書いていた制度論を自治体職員が書けるようになってきたのが第一世代。第二世代は仕事術レベルで、僕の本もそれに入ります。

山形市役所の後藤好邦さんの「自治体職員をどう生きるか」、諫早市役所の村川美詠さんの「公務員女子のおしごと帳」、塩尻市役所の山田崇さんの「日本一おかしな公務員」が、まさに第三世代にあたり、公務員の生き方の本です。その人らしい働き方がにじんでくる良い本ですよね。公務員だからまじめ一辺倒ではなくてならないとかではありませんから。

 

-ご著書ではあまり女性公務員向けには書かれていませんが。

僕はまだ悪い意味で男性目線です。相談を受けたり、本を執筆する中で気づいたことがあります。公務員の世界では、女性の方が優秀なのは事実です。公務員試験の成績も優秀だとされています。女性職員の皆さんには、もっと自信を持ってほしいというのが一つです。昇進試験についても職場の信頼が篤いにもかかわらず、「自分はまだ早い」とか、「なったらどうしよう」と心配している女性が多いです。もっと自信を持ってほしいですね。

 

-なかなか自信が持てないんですよね。

自信をどういうふうにつけていくか。能力が高くても、いかに「できる」という自己効力感を持つかということですけど。公務員はやって当たり前で、なかなか褒めて認めてもらえない、自信を持ちにくい職場風土です。出来ていることがどういう価値があり、素晴らしいことであるかを、上司や周囲はちゃんと伝えてあげたほうがいい。私の経験では、女性の方が自己効力感が低く、残念だなあと思っています。よく考えている女性ほど、出来ないところが見えて考えすぎているように感じています。

 

-そのほかありますか。

相談を受ける中では、夫と家事の役割分担をちゃんと話していない人が多かったです。夫も家庭への理解が薄い場合が多いのは確かです。でも、どういう働き方をしたいのか、どんな家庭を作っていきたいかを夫婦で話をしていないことが少なくありません。お互いに話すことでまとまることもあります。それを進めていくと、女性のほうが昇進することも多いですけど。男性もプライドを捨てて、妻の昇進を受け入れていく必要がありますね。

 

-なるほど。

マネージャーやエキスパートになると、仕事を無理やり仕上げることも求められることもあります。バランスの取れた女性の場合、ひと踏ん張りの詰めの経験を早い時期にできるといいと思います。限界を超える仕事を若い頃にした経験は、仕事をしていく上での土台になりますし、人に力を借りるタイミングが分かるようになります。まだまだジェンダーフラットでない今の組織だと、その経験がないと苦労をするし、女性が自信を持てないのも分かります。

 

-そうですね。

女性だけではないんですが、自分は何でこの仕事をしているんだろう、どういう時に嬉しくて、どういう時に悲しいのかを考えることが大切です。悲しいというのは、大事なことがそうならない気持ちの裏返しですよね。家庭が大変な中でも、この仕事をなぜやっているのか。一時的には仕事を中断してでも、仕事を続けているのはなぜか考えてみることです。吹田市の菅有紀さんや諫早市の村川美詠さんも、いろいろ悩みながら40代・50代になってから自分らしく働けるようになってきたと仰っていました。それまでの家庭や地域のいろんな経験が、組織で活かせるようになります。焦らなくてもいいんです。規模の大きくない自治体であれば、我が強くなければ組織は人材不足なので役割を与えられるものです。

 

→2/4につづく

 


〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
平日は、パッとしない公務員。土日は、「人生100年時代」の旅人。元気な100歳、『百寿者』を目指しています。まずは、健康第一。85歳までは、ほそぼそ働き続けたい。定年後、私ができる仕事は?人生100年時代、公務員の2大リスク「定年制」と「副業禁止」。その壁は壊さずに、なんとかよじ登ってみたい。登った先に、どんな景色が見えるのか?私の知らない景色を見ている、憧れの人生のセンパイたちを訪ねます。
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