まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒント Vol.11(下)

「公務員=リスク」という、もやもやした不安への向き合い方を学びたい。
そのヒントを求め、元熊本県人吉市役所職員で、ストレングス・コーチの丸本昭さんにお話を伺いました。
まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒントVOL11(中)の続きです。

 

-29年間人吉市役所に勤め、企画課長までなられていたにもかかわらず、54歳で退職されたのはなぜですか。

もともと人材育成に関わっていきたいと思っていました。当然人事異動で違う部署になったり、管理職になると調整業務で会議が多くなって、自分の職員とも話せなくなりました。仕事をしながら人材育成に関わっていくのは難しいと考えはじめ、退職する7、8年前から、独立してやっていきたいと計画していました。役所の中でやりたいことはだいだいやったかなと言うのと、自分の父親を見ても元気なのは70歳までかなと。定年退職して70歳だと10年。10年前って、ついこないだのことですよね。やはりやりたいことをやるには15年はほしいので、55歳には辞めようかなと思っていました。結果的には1年早まりましたけど。

 

-市役所を辞めるときにご家族から反対されませんでしたか。

辞めたいと妻に伝えたところ、反対されました。妻とは同じ職場で、「役所の中でもっといろいろやっていってほしい」と言われました。しばらく反対されましたが、最後は分かってくれました。妻に反対されたとき、ここで諦めて60歳まで勤めたら、後々後悔するだろうなと1年くらいかけて話をしてきました。トータル3年でなんとか収支のベースには行くのかなっていう見通しはありました。辞めるまでに準備しながらネットワークを作っていましたし。私の仕事は事務所が必要なく、人を雇う訳ではないので固定費がかからないのでやりやすさはあるのかなと思います。

 

-これからどんなことをしていきたいですか。

自治体の組織のマネジメントって言い方していますけど、そこで働いている人が働きがいもって働いていくことがその街が良い街になると思います。組織での関わり方とか、その人たちが成長できる場をつくっていきたいなって。「This is My Life」というように、自分の人生ってほんと限られていますし。つい最近、私より若い知人のコーチが突然亡くなりました。それを見た時に、「いつかやりたいな」という「いつか」はないかもしれない。いつかではなくやりたいときにやるべきだし、会いたいときに会いにいくべきだと思いました。自分もそうしたいし、それをコーチングの中でお手伝いしていきたいですね。1対1のコーチングもですが、10人くらいのコミュニティをあちこちに作ってやっていきたいですね。

 

-公務員のこの先へ一言お願いします。

公務員であるからこそできることっていっぱいあるんですよね。なかなかふだんは気づかないんですけど、それをぜひいっぱいやってほしいなと。それと、仕事の中でいつも考えているのですが、公務員って今、疲弊していますよね。小泉改革以降、職員数をずっと減らしているんですよね。今の職員の配置って平時のぎりぎりの体制なので、災害やコロナのような非常時に対応できていないですよね。そういう疲弊している状態だけれども、職員は増やせない。せめて職場の中だけでもお互いに承認しあえるような職場であってほしいなと。公務員ってまじめなので、できて当たり前になっていますけど、あれだけのことを間違えずに安定して、やり続けることは強みなんですよね。ちゃんとやっていることを承認してほしいし、仕事が細分化すればするほど、一人ひとりの仕事が個業になってしまいます。自分の仕事を人に見てもらっていないとか、相談できないのはストレスになります。そんな状況なので役所でメンタルで休む人が多くなっています。公務員の仕事のやり方も変わっていく必要があるのかなと思います。

 


宇宙(そら)の旅日記

同じ職場に勤めるパートナーに市役所を辞めたいと話した時、「辞めずにもっと役所を変えてほしい」と慰留されたそうです。身内の方からも一目置かれる丸本さんの仕事ぶりがうかがえ、市役所内で大きな存在だったことが示すエピソードだと思います。人事評価制度づくりを全職員参加型で行い、「自分ごと」になるような周囲を巻き込んでいく仕事のやり方はまさに王道です。組織にいると、そういった改革の動きは、上から押し付けられたと思い、やらされ感になりがちです。いかに、市民のための仕事を自分ごととして前向きに取り組んでいけるような公務員をひとりでも多く増やしていけるのか、丸本さんが起業されてやりたかった人材育成の仕事なんだと思います。

ストレングスコーチである公務員の方に丸本さんを紹介してもらい、SNSでお人柄を知り、インタビューをお願いしました。後に九州の公務員の方々に大きな影響を与えた方とお聞きして、自分の向こう見ずさに恥ずかしくなりました。でも、そんな影響力のある丸本さんとご縁を持てたことは奇跡のように思います。これまでもインタビューをさせていただいた方々は、人生のロールモデルになるような方ばかりでした。丸本さんはそれだけでなく、仕事で直属の部下になりたかったなって思いました。

 

 


〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
平日は、パッとしない公務員。土日は、「人生100年時代」の旅人。元気な100歳、『百寿者』を目指しています。まずは、健康第一。85歳までは、ほそぼそ働き続けたい。定年後、私ができる仕事は?人生100年時代、公務員の2大リスク「定年制」と「副業禁止」。その壁は壊さずに、なんとかよじ登ってみたい。登った先に、どんな景色が見えるのか?私の知らない景色を見ている、憧れの人生のセンパイたちを訪ねます。
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