まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒント Vol.10(下)

「公務員=リスク」という、もやもやした不安への向き合い方を学びたい。
そのヒントを求め、太田市でテレワークを活用したひきこもり支援をしている大橋志帆さんにお話を伺いました。
まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒントVOL10(中)の続きです。


 

-地域での活動を始めた原点はありますか。

市役所で働き始めて11年目に、さきほども話に出た国民健康保険の担当課に異動しました。ここで市民窓口の洗礼を受けました。後から考えると、そこでの経験が今の活動に繋がっているなあと思っています。窓口には様々な境遇の方がお見えになるので、どう答えたらいいのかと迷うこともありました。病気や出産、介護などいろんな事情で退職して、国保加入手続きに来られた方がいました。 無収入の状態が長く続けば、行き着く先は生活保護ですよね。窓口対応しながら、私自身もやりきれない気持ちになりました。自分の仕事の限界も感じました。ああ、私は保険証を発行することまでしかできないんだな・・・って。この方たちが仕事を辞めずに済む方法はなかったのかな、もうちょっと何かできないのかなと、頭の中でずっと気になっていました。自分のなかでかなり考えが固まってから「私はこんな活動をしたい」と周囲に話しました。その時はすごく驚かれました。「急にどうしたの?」「頭がおかしくなったんじゃない!?」と、かなり心配されました(笑)

 

-最初の地域活動はどのように始められたのですか。

NPOの支援を個人で始めるにあたって、何をしたらいいのか悩みました。ただ、ずっと悩んでばかりいても仕方ないので、まずはNPOについて勉強を始めました。一年たった時に、自分がやりたいと思うことを言葉で表現できるといいなと思ったんです。「NPO」「ボランティア」でネット検索して『地域に飛び出す公務員ハンドブック』という本に出逢いました。

本の中に紹介されていた「地域に飛び出す公務員ネットワーク」のメーリングリストに登録して、さっそく自己紹介の投稿をしたら、全国の公務員の方から激励のメッセージをいただきました。同じように地域活動をしている公務員の存在を知って、とても勇気づけられました。テレワークの普及というテーマで月1回投稿を始めると、その投稿に返信が寄せられ、別なイベントでお会いした方から、「あのテレワークの投稿の大橋さんですね?!」と声をかけられるようになりました。メーリングリストって、一方的な発信なので、相手の反応が見えにくいです。でも返信があると、読んでくれている人がいることが分かるし、頑張ろうという気持ちになりました。千葉県で開催された「地域に飛び出す公務員を応援する首長連合サミット」に参加した時に、事務局に入りませんかと声をかけられ、毎年のサミットの運営をお手伝いしています。サミットに参加される首長とはフラットな関係でお話できるので、これはものすごく貴重な機会となっています。

 

-仕事や地域活動で様々なチャレンジをしている話をお聞きしましたが、キャリアの原点はありますか。

最初の職場の財政課ですね。当時は女性の仕事といえば、「庶務とお茶くみ」、女性一人で出張することもありませんでした。でも、財政課の人たちは、「これからは女性も男性と同じ仕事を持ってやってかないとお互い大変になっちゃうし、ぜひ、そうしてもらいたいんだよね」と後押ししてくれました。それまで女性は予算編成作業に参加していなかったのですが、私は1年目に先輩の手伝いという形で予算査定を経験しました。2年目になる時に、先輩たちから「何をやりたい?」と聞かれ、「今までやったことがないことをやりたいです」と言って、本格的に担当予算を持ちました。一人出張や、議会の答弁書作成も経験しました。当時の係長には徹底的に鍛えてもらったので、育ての親だと思っています。自分がやりたいと思っていても、周囲の理解や後押しがないと、なかなか自分からは言い出せないですよね。だから本当にありがたかったです。私が本格的な予算担当第一号になって以来、歴代の女性職員も予算担当を持っています。今はもう当たり前のことになりました。

 

-今後、どんなチャレンジをしていきたいですか。

文書編集チームの活動をNPO法人化したいです。今は作業してもらっても無報酬です。NPO法人で仕事を受けて、メンバーに報酬を支払いしたいし、助成金等も活用したいと考えています。公務員として働きながらNPO法人を運営している方がいらっしゃるので、アドバイスをいただきながら、やり方を模索しています。

市役所ではこれまでの地域活動の経験を活かすような仕事ができたらいいなと思います。男女共同参画や地域の人財育成に興味があります。COG(チャレンジ!!オープンガバナンス)で応募した内容のような働きづらさを抱えている人が働ける場づくりは、市役所窓口に限らず、いろいろな所でもやっていきたいなと思います。

 

-公務員のこの先へ一言お願いします。

「公務員になることがゴールだと思わないで」と学生さんには伝えたいです。楽そうだからとか安定しているという理由で選ぶのはやめたほうがいいと思いますね。これからの公務員は厳しい時代を迎えます。私が就職した時代とは全然違いますし。公務員になってから何をやるか、自分のこれからもそうなんですけど、外の世界を知っていたほうがいいですね。自分の仕事をちゃんとやるのはもちろんですが、それだけだとスキルも身につかないし視野が狭くなるので、外に出て刺激をもらって、自分の仕事に何らかの形で還元したほうがいいと思います。

 

〜 宇宙(そら)の旅日記 〜

大橋さんは経験したことを論文の形としてまとめられ、何度も応募されています。その論文の中で、これまでの地域活動を活かした部署に配置されたにも関わらず、様々な事情により道半ばで異動せざるを得なかった悔しさも率直に書かれています。大学で日本語の文法をテーマに研究し、分かりやすい文章を書くための訓練も積み重ねてきたとおっしゃるとおり、とても読みやすく丁寧な文章です。水道局の企業会計の仕事をした経験もあるので、NPOの会計処理のお手伝いをしようと考えていたこともあるそうです。

大橋さんの一人ひとりとの向き合い方や仕事ぶりがとても丁寧で、思慮深く行動されてきた積み重ねが今の活動に繋がっていると思います。まんなか世代同士、しかも興味や関心のある分野も近いので、今後何か一緒にできることがあるのではと期待しています。

 


〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
平日は、パッとしない公務員。土日は、「人生100年時代」の旅人。元気な100歳、『百寿者』を目指しています。まずは、健康第一。85歳までは、ほそぼそ働き続けたい。定年後、私ができる仕事は?人生100年時代、公務員の2大リスク「定年制」と「副業禁止」。その壁は壊さずに、なんとかよじ登ってみたい。登った先に、どんな景色が見えるのか?私の知らない景色を見ている、憧れの人生のセンパイたちを訪ねます。
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