知りたい:「外出自粛」で問われる学校の形

知りたい:「外出自粛」で変わる学びの形[学校編]

「新型コロナで外出自粛」が続く。例年であれば旅行だイベントだと浮き足立っていた「ゴールデンウィーク」に、SNSを通じて、うちで踊る、うちで腕立て伏せする、昔の写真を公開する、などといったことに楽しみを見出すという激変ぶり。その変化は、学びの場にも及んでいる。(古川晶子


いつ終わるともしれない「臨時休校」に対応して、学校がオンライン授業を取り入れ始めた。一部の私立高校は、入学時から生徒全員にタブレットを持たせていたので、切り替えが早かったようだ。その先に受験を控えていることを思えば、休校イコール進度ストップというわけにもいかず、だろう。早い対応であればあるほど、生徒はいつもの教師の姿を画面で見ることができるし、保護者は授業が途切れないことを知り、ともにいくばくかの安心感を得られたことだろう。

義務教育は対応に幅があるが、多くは自治体の教育委員会と小・中学校がホームページで情報発信している。休み中の過ごし方や相談窓口を案内しているのは共通だが、学習については温度差がある。オンラインで「朝の会」を配信する地域もあり、毎日サイトで「今日の課題」が更新される学校もあれば「学年だよりをご覧ください」と表示して紙のプリントを後日ポスティング、という学校もある。地域性や住民の学校に寄せる期待の違いが表れるともいえる。

じつはオンライン学習の材料は、各校で準備しなくてもインターネット上で公開されている。「NHK for school」は各科目の学習内容を視聴覚教材として提供していて、もともと学校の授業でも補助的に活用されていたし、単体でもじゅうぶん見ごたえがある。学校からの学習の指示が、この番組の視聴という例も。

文部科学省も今回の臨時休校を受けて「子供の学び応援サイト」を開設している。こうなってくると、これまで重大問題のように言われていた「不登校」はなんだったのだろうという気がしてこないだろうか。筆者はしている。

多様な人がともに生きられる「まぜこぜな社会」を目指して活動する浜本由里子さん(NPO法人クッキープロジェクト)は「これまで学校は、いい会社員になるための訓練をしていた」という。たしかに、文部科学省の「キャリア教育推進の手引」は「学校教育に求められている課題」は「生きる力」の育成、といいつつ「社会人として自立した人を育てる観点から」とその方向性を規定する。

人の「生きる力」は一人ひとりの個性によって異なり、その育み方も目指すところも異なっていていいはずだ。しかし「キャリア教育推進の手引」から読み取れるのは、新卒が企業においてできるだけ早く一人前に稼働できるよう、行動様式を強化するということだ。

学校に通う子どもたちの大半が、卒業後になんらかの組織の一員になり、安定した生活を手にするならば、その学校生活の成果は齟齬なく発揮されるといえるかもしれない(その枠におさまらない子どもは置き去りのまま)。しかし、20年以上前から日本の企業は、働き手になにも保障できる状況ではない。しかも、満員電車の通勤や、狭いオフィス空間など、出勤そのものが感染症対策には望ましくないからと、いまやテレワーク導入が推奨されている。

この生活がどれだけ続くかわからないいま、学校の形が問い直されている。オンライン学習は今後、ますます充実と普及を目指していかなければならないだろう。突然ものすごい特効薬の開発・普及ができれば別だが、あまり期待はできそうにないし、子どもたちの学年はその間にどんどん進んでしまう。

オンライン学習のツールに対応する事務局の力が問われる。空間をともにしなくても意欲をもって取り組めるような授業の組み立てを設計し直す必要がある。そして学習内容や到達目標の全体については根本的に見直すべきだ。

すでに取り組んでいるごく一部の私学を除けば、オンライン学習にはこの事態を受けて着手した、という学校がほとんど。様々な混乱や現場の苦悩も聞こえてくるが、混乱があるということは、正解が定まっていないということ。かかわるのがいちばん面白いときかもしれない。「オンラインの夜明けぜよ」というところか。

もちろん、世界にはオンライン授業も選択肢のうちとして当たり前に受けられる国や地域があるし、日本でもそうした情報を積極的に得て取り組みを進めている人たちもいる。専門家個人や団体など形はまちまちだが、いずれにしてもこの波は大きなチャンスで、皆さん「学びを洗濯し申し候」という気持ちでは(坂本龍馬ファンに刺されたくないのでこのへんにしておく)。世界の動きに目を背けてきた日本社会が、抗えない力を受けている2020年は、もしかしたら明治維新のように、価値観や仕組みが大きく変わる節目になるかもしれない、と思う。

NHK  for school

子供の学び応援サイト(文部科学省)

小学校・中学校・高等学校 キャリア教育推進の手引 児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てるために(文部科学省)

NPO法人クッキープロジェクト