きょうはなんの日(1)ILO設立 1919年4月11日

きょうはなんの日(1)ILO設立 1919年4月11日

「人生100年時代」を生きるぱっとしない中年が、その日に起きた出来事と今の社会とのつながりをつらつら考えるコラムです。読んでいただけたらほくそ笑みます。

4月11日は国際労働機関(略称:ILO)が設立された日。1919年というから101年前です。目的は、世界の働く人々のために、労働条件と生活水準を改善すること。

私はこれを初めて知ったとき、「そんな労働者のヒーローみたいな国際機関なら、長時間労働とか賃金差別とかガラスの天井とか、まとめてやっつけちゃって!さあみんなで呼ぼう、アーイエールオーーーー!」と思いました(ヒーローショー風)。

しかし、実は日本は設立時からの加盟国です。第1次世界大戦後の1919年「パリ平和会議」において、戦争責任や戦争犯罪の処罰と並んで、国際労働立法が議題とされ、そこからILOが設立されたのですが、日本は戦勝国としてこの会議に臨んでいました。そして主要加盟国で常任理事国です。

それなのに、なぜ日本では長時間労働も職場の性差別も非正規の待遇格差も「野放し」なのか。やっていることは明らかに悪役なのに正義キャラのメンバー。超矛盾です。

国連の専門機関と加盟国の関わりは、主に国際条約の採択と批准によります。ILOの場合は「国際労働条約」で、批准とは、加盟国がその内容に沿う社会づくりに努めると約束すること。それぞれの国の事情に応じて、個別の条文を批准するのですが、日本が批准しているのは全体の約4分の1(少ないです)。

ILO憲章には「いずれかの国が人道的な労働条件を採用しないことは、自国における労働条件の改善を希望する他の国の障害となる」という文言があり、加盟国である限りは世界と足並みを揃えることを求められます。日本が早期批准を求められているのは、労働時間や休暇、雇用形態などにかかわる条文です。

さらに、日本は性別による賃金差別の国でもあります。これに関しては、1967年に「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬」を定めた「ILO100号」を批准しているにもかかわらず、2020年の今に至るまで、世界の先進国のなかでは最悪の賃金差別を放置しています。その間、条約を実施するよう、ILO監視機構より再三の「直接請求」や「意見」を受け、1990年代には2回にわたって総会で取り上げられています。

つまり日本の状況はただの「野放し」ではなく、国連機関の意向を無視して、非正規問題や格差の深刻化、「女性活躍推進」の名のもとに進む二重負担の強化という状況を、あえて放置しているのです。なぜこんなことができてしまっているのでしょうか。

まず、これまで日本社会でILOのアクションがほとんど報じられなかったことが挙げられます。「ILO100号」を議題とした2回にわたる総会は、相当に厳しい空気のなかで行われたといいますが、日本の代表団は国内メディアにその事を伝えず、記事にならなかったのです。次に、この問題を取り上げる場に当事者がかかわっていないのも要因でしょう。日本の代表団の、労働者代表は全員男性でした。政府代表と使用者代表もほとんどが男性で、帰国後の報告は女性の人権について非常に消極的なものとなりました。日本社会に影響を与えることができなかったという結果につながっています。

国連機関からのアクションにすら反応しない日本。絶望的な気持ちになりますが、望みはあると思います。

90年代と現在の違いは情報化のレベル。今や、各種の会議やアクションは随時ネット上に公開され、翻訳も手軽に利用できます。大手メディアが報道しないことを、個人が情報収集、拡散することができる環境となりました。日本で働く私たちが、現状の不当さを認識すること、そして連帯して発信することができるはず。

ILOが定めた21世紀の目標は「すべての人へのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現」、そして2019年に出された「ILO100周年宣言」では「仕事の未来に向け人間中心のアプローチをさらに発展させる」とうたっています。それを実現するのは、どこかにいるヒーローではなく、当事者である私たちにかかっているのでは。(古川晶子

ILO駐日事務所(公式サイト)

参考図書:戸塚悦郎『ILOとジェンダー』日本評論社

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