まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒント Vol.9(下)

「公務員=リスク」という、もやもやした不安への向き合い方を学びたい。
そのヒントを求め、福岡県直方市の市民グループ「のおがた未来カフェ」の梅原達巳さんにお話を伺いました。

まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒントVOL9(上)の続きです。


-今の職場はいかがですか。

今は文化施設の担当なのですが、毎日が楽しいですよ。先ほども言いましたが、基礎自治体って市役所の職員の肩書を取ろうと思っても取れないですよね。今日も休みだったのですが、近くの施設へ子どもたち向けの人形芝居を見に行きました。プライベートで美術館に行っても、文化施設の仕事をするようになったことで、これまでと見方が変わりました。生活保護の仕事をしていたので、「大人のしゃべり場」も地域とか子供たちの様子とかに関心がありましたし。関わっている仕事が変われば、その仕事の知識が深まりまっていきます。何をやっていてもその視点で見るようになります。

-これまで出会った人の中で心に残っていることはありますか。

社会人になって1年目(自動車メーカー)の時の話です。仕事が分かってくるようになったころ、上司が代理で僕を会議に行かせてくれました。その報告を上司にした時に「そんな程度の報告だったら、テープレコーダー持っていって俺に聞かせろ。」と言われたのです。テープレコーダーに負けた話なんですけど、今でも気にかかっています。公務員って誰でも同じようにできるようにやらないといけないと言われているじゃないですか。その反面、その時の話があって、「なんのためにお前を行かせたのかを考えろ。」という指摘がずっと引っかかっています。

-若い職員にも伝えたい話ですね。

役所の仕事としては異動があるがら、「あなたが異動しても次の人ができるようにしておきなさい。」って言いつつも、その一方であなたしかできないことがあるだろうしというジレンマを日々感じています。管理職として仕事を回して、一定の品質を保たなくてはいけないので、そのバランスが難しいところです。

-すごく、わかります。

ファシリテーションの師匠の一人から言われたことで、今の話と同じように感じたことがあります。ファシリテーションは楽譜みたいなもので誰が弾いても同じ音がでるはずです。でも、コンサートを聴きに行く人は、「誰」の音楽が聴きたいかで行きます。同じようにワークショップのやり方もマニュアルはありますが、「誰」がするかで相手に届くものは違います。ファシリテーションのやり方は秘密にするものではなくどんどん公開しています。この場を誰にしてももらいたいかというのは、やり方の問題でなく人の問題なのです。「誰」がするかでその空気感は変わっていきますよね。

-今後チャレンジしたいことはありますか。

前向きな話じゃないんですけど、「自分がやったほうが早い病」を治さないといけないと思っています。年を取れば取るだけ止めなきゃいけない。仕事だとこの時までこれをやらないといけないという時にイラっとしたものがでてしまっていますね。

-私たちってマネジメントを本当の意味で学ぶ機会ってあまりないですよね。

そうですね、人を育てるっていう仕組みが出来てないです。ちょっと話がずれるけど、役所って人件費に対して無頓着ですよね。地方公務員でも幹部クラスともなると1000万円近い人件費がかかっているじゃないですか。1000万円の事業をするのにすごく躊躇するのに、その価値があると思って職員を大事にしているといえるのか。組織として人の価値を活かすべきだし、職員もこれだけもらえるのだからこれだけ返そうっていう自負をもってほしいですよね。

-梅原さんのようにやりたいことをやり遂げられるコツってありますか。

大人のしゃべり場は行政で実現せずにプライベートでやったほうが実現できると思っていました。無声映画の上映会とか、暗闇の中でのラジオを流すような、参加に制限ある方向けの事業は今の職場でできるので仕事でやったほうが早いんですよね。やりたいことがあったときは、どのステージでやることが一番労力がかからないのか、自分でやったほうがいいのか、別の立場の人にやってもらったほうがいいのかを考えています。

-公務員のこの先へ一言お願いします。

私は公務員になって良かったです。人に知ってもらっていることで、存在認識をしてもらっているありがたさを日々感じています。一人の人間として、仕事やまちの中で居場所があることは嬉しいことです。基礎自治体の職員の一人として伝えたいことは、顔を知ってもらっていることで、地域活動であっても仕事であってもやりたいことができる、考え方を伝えることができるということです。公務員の仕事はいろいろ変わっていきますが、そこの市の職員であることは変わりません。定年退職してからも自分を知ってくれている人がいることは、何をしようとする時もそこがベースにあるので実現の可能性も格段に高くなるでしょうし。それは、職業的特権であり、強みではないでしょうか。「大人のしゃべり場」を実現できたのもそれもあろうかと。今、話題になっている公務員の兼業は、どんどんやったほうがいいです。僕の中では本業も兼業も境目はないのですけど。プライベートの活動のおかげで、本業が上手くいくことがあります。本業と兼業のどっちが先とか後とかは、結果としてしか分からないですよね。仕事もプライベートもあまり区別をせずに混ぜて楽しんじゃったほうがいいんじゃないですか。そうしないと、どっちも楽しくないですよね。


宇宙(そら)の旅日記

知人のFacebookの投稿 「大人としゃべり場 /トークフォークダンス」  の参加者募集を見たときから、これは面白いに違いないとすぐに申込みました。 真夏の中学校の体育館での中学生とのおしゃべりは想定を越える盛りあがりでした。現地で会った友人たちと熱気そのまま、わいわいおしゃべりしながら帰宅の途についたのも楽しい思い出です。その後開催されたトークフォークダンスの魅力を語り合うイベントでお話しされていた梅原さん。その話術に惹かれ、勢いこんでインタビューをお願いしました。そんな私を軽やかに受け止めていただき始まったのがこのインタビューでした。

梅原さんは2010年に手作り筏の川下り大会に参加している時に心室細動を起こして倒れたことがあるそうです。仲間と自衛隊の救命活動によって心肺停止状態から蘇生し、心臓バイパス術とICD(植え込み型除細動器)装着によって社会復帰されています。 軽妙な語り口の反面、どんと受け止めてもらえるような安心感はそんな経験をされているからなのでしょうか。梅原さんのような対話のスタイルが公務員の世界でも当たり前になれば、市民の方にもっとお役にたてる役所になり、 私たち自身ももっと働きやすくなるのではないでしょうか。


〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
平日は、パッとしない公務員。土日は、「人生100年時代」の旅人。元気な100歳、『百寿者』を目指しています。まずは、健康第一。85歳までは、ほそぼそ働き続けたい。定年後、私ができる仕事は?人生100年時代、公務員の2大リスク「定年制」と「副業禁止」。その壁は壊さずに、なんとかよじ登ってみたい。登った先に、どんな景色が見えるのか?私の知らない景色を見ている、憧れの人生のセンパイたちを訪ねます。
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