みんなの総務部通信2号(下)

働き方改革と感染症予防の決定打「テレワーク」の導入が日本で遅れている理由(下)

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会社側の心配:情報漏洩の問題

企業における情報漏洩の原因で、二番目に多いのが、内部不正による情報漏洩です。
内部不正による情報漏洩とは、意図的な会社情報の漏洩ばかりではなく、不注意による情報漏洩も含みます。
オフィスでは隣や後ろの人は社員ですから、仕事を覗き見られたとしても、会社の秘密が社外に漏れる状況ではありません。
しかしオフィスの外で仕事している時、例えば喫茶店などで、隣に座っている人はライバル会社の社員かも知れず、覗き見イコール情報漏洩になる可能性があります。
また、テレワークの時にプライベートのパソコンを使っている場合、ウィルス対策が会社のパソコンほど万全ではないので、簡単にウィルスに汚染され、会社の秘密情報が流出する可能性があります。
せっかく情報漏洩に対する対策をきっちりしても、テレワークを導入した途端、その努力が全て水の泡になる可能性があります。

社員側の心配:1人で仕事するとモチベーションが上がらない
一人で仕事していると、モチベーションを保つのが大変、と言う人がいます。
いろいろな人と一緒にいるとやる気が出るとか、会社の情報が入ってこないとか仕事の能率が落ちるとか、仕事のアイデアは雑談の中からうまれるとか、そういった環境を大事にしている人は結構多く、社員側でテレワークを阻む社員が多い原因の一つです。
喫煙室でのコミュニケーションは仕事の潤滑剤だとか、ノミニケーションこそ重要、と思っている人たちは多くいます。また、台風などの自然災害で公共交通機関が途絶した時になると、なぜか突然必死に会社に来ようとする人もいます。

テレワークと言っても、ずーっとテレワークをしているわけではなく、実際にテレワークを始めてみると、1週間のうち半分以上は出社するとか、交通途絶の時のみテレワークするとか、オフィスでの作業時間は意外と多くなり、コミュニケーションの不足はあまり感じないでしょう。
zoomはスカイプなどの無料でビデオ会議を活用すれば、スケジュール調整や打ち合わせ場所の確保などの面倒な作業が入らない分、オフィス内でのミーティングより、より気軽にミーティングができます。

社員側の心配:隣の奥さんの目が気になる
結婚されている男性の方は、平日昼間に自宅にいると、たとえテレワーク中であっても、ひけめに感じるかもしれません。ちょっとした用事でコンビニまで出かける時など、どうしても周りの目が気になります。
隣の奥さんとばったり会った時、訝しげな顔をされること間違いなしで、そんな時、妙にいたたまれない気持ちになったりします。

社員側の心配:仕事中に怪我をしても補償がない
これ、実際に社員側が本当に心配しているかどうかわかりませんが、テレワークで一番心配なのは、仕事中に事故が起きたときの補償問題です。
オフィスや工場、現場で仕事中に事故を起こした場合は労働災害になり、治療費の全額が労働災害保険から支給されます。
一般の健康保険が3割個人負担ですから、労働災害保険は、治療費の全てが保険で賄えるので、とても手厚い保険です。
ただし、労働災害保険でカバーされるのは、ずばり「仕事が原因」の怪我や病気です。
自宅で仕事している場合、書斎などがあり、仕事中しか入らない部屋があるのであれば、その部屋で仕事をしている時は仕事中であったと証明できるかもしれません。しかし、日本のような住宅事情では、多くの人にとって、自宅に仕事しかしない部屋をもつのは、ほとんど不可能でしょう。
だから、テレワーク中の怪我や病気は、労働災害保険で保証されない可能性が高いのです。

社員側の心配:テレワーク可能な仕事が少ない
テレワーク可能な仕事は、テレワークの環境を揃えないと、結構限られてきます。
会社の重要な秘密が漏れないようなシステムでない限り、自宅で重要な会社の秘密を取り扱うのは、かなり問題があります。
会社が持っているお客様などの個人情報も、慎重な取り扱いが必要になります。
だから、テレワークにふさわしい仕事は、会社や個人情報を扱わなくても問題ない総務系や企画系、外回りの営業などの、ごくごく限られた仕事になってしまいます。
ただ、テレワーク専用のシステムを導入して、社内の基幹系のシステムを社外でも使えるようにしたり、情報セキュリティに配慮したシステムにすれば、テレワークの可能性は大きく広がります。

それでもテレワークは魅力いっぱい
会社側の事情、働く側の事情、色々とありますが、それでもテレワークはかなり魅力的と言えます。

無駄な時間を削減してWin-Win
私のように通勤時間が1時間半以上もかかる人はそれほど多くはないでしょう。しかし、時間が短くても、通勤時間は多くの人にとっては無駄な時間です。通勤の負担の削減は、時短実現の重要な要素の一つです。
様々な工夫をしても、一人の人間が一定の時間にこなせる仕事の量には限界があります。限界に近づこうと一生懸命働こうとすればするほど、働く人のストレスはたまります。これでは、勤務時間が短かったとしても、働く人にかかるストレスにそれほど差はありません。
通勤時間のような、働いているわけでもない、休憩しているわけでもない時間を減らす仕組みは、会社にも社員にもメリットがありますから、是非導入してみましょう。

とりあえずテレワークをはじめてみよう
感染症予防や混雑防止のために、今後ますますテレワーク導入を検討しなければならなくなるでしょう。
各システムベンダーからは、テレワークに最適なシステムの提供も始まっていて、システムによっては、無料で試せるものもありますから、まずは試験導入したらいかがでしょうか。

ルール作りはしっかりと
テレワーク導入を成功させるために一番大事なのは、ルールを明確にすることです。
特に、どんな状況のときテレワークができるのか、自宅やカフェなどで仕事中の怪我への対応をどうするのか、情報漏洩対策をどうするのかは、明確にしておきましょう。
そして、実際にテレワークを使う社員には、定期的に研修などを通じて、テレワークのルールを理解させる必要があります。
きちんとルールを定めて、無駄な時間を削減すれば、会社も社員もニッコリなテレワークを実現できるでしょう!

 


~執筆者プロフィール~

加納 勉(みんなの総務部代表)
中小企業の総務部で27年間勤務。人事・防災対応・コンプライアンス・施設管理から、社内情報システム・情報セキュリティ・品質管理など、ありとあらゆる業務を、実務だけでなく仕組み構築やマネジメントを経験しました。わからないこと、困ったことは、とにかく何とかしますので、お気軽になんでもご相談ください。
趣味はアマチュア無線(電子書籍出版しました)、ジョギング、旅行。Jリーグ大宮アルディージャの熱烈サポーターです。
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