知りたい:世界と約束した「男女平等」実現するには

知りたい:世界と約束した「男女平等」実現するには

毎年12月に発表される、世界経済フォーラム(スイス)のジェンダー・ギャップ指数は、男女格差の国際比較を示す。日本はその順位において、長年、先進国最下位という不名誉な地位を占めている(2019年は153カ国中121位)。日本政府が「女性差別撤廃条約」を批准し、国内の「男女平等」実現を世界に約束したのは1985年のこと。35年越しの約束を守るのに必要なものは何だろうか。(古川晶子


ジェンダー・ギャップ指数は、経済分野・教育分野・保健分野・政治分野の4つの領域で算定される。日本はこのうち、保健においては真ん中より上、教育はそれより下ではあるがとびぬけて低い順位ではない。より深刻な問題は経済と政治の領域にある。そして、多くの施策は、行政でも企業でも、相談や学習など女性に対する働きかけの形で行われている。

もちろん、相談も学習もなくてはならない取り組みだ。相談事業は、苦しい状況にある当事者と繋がり、心理的な支えや問題解決のための情報提供、または緊急時の対応などを行うもの。また、性別による差別に抵抗するための知恵を得る学習の機会も重要である。

しかし、女性にばかり働きかけがなされている状況は、ともすると一部の「女性に実力と意欲が不足しているから男女共同参画が進まない」という解釈に勢いを与えてしまうのではないだろうか。性差別において、女性は不利益を被る側であり、いわば被害者である。問題の対応について、加害者でなく被害者に求めることが多いというのは、性犯罪に顕著だが、男女共同参画の施策においても似たような傾向が見られるとすれば、あまりにも残念なことだ。

世界の男女平等の土台である「女性差別撤廃条約」は、単に批准国が守るべきことを定めるにとどまらない。1999年に採択された「選択議定書」にある「個人通報制度」では、条約上の権利の侵害に対して国連の女性差別撤廃委員会に直接、申し立てができるとされている。

いきなりではなく、最高裁までの国内的手続きを経る必要はあるが、申し立てを受けた委員会からはその事柄について、国に対して「見解・勧告」が出される。国内で当事者に不利な判決が出たとしても、国連に通報するという方法があるわけで、これがあるのとないのでは、裁判の行方がかなり違いそうだ。「女性差別撤廃条約」の研究と普及に取り組む「国際女性の地位協会」では「裁判官の人権教育の重要性が広く認識され、司法判断に条約の内容が活かされる」という効果が期待されるとしている。その実績が積み上がっていけば、誰もが生きやすい社会をつくる動きにもスピード感が出そうだ。

しかし日本は「選択議定書」については批准していない。国連で採択されて20年がたち、すでに110ヵ国以上が批准しているのに。その理由としては「司法権の独立」があるというが、素直に受けとることはできない。日本社会の根深い性差別の意識と、それにより凝り固まった立法・行政・司法が、世界的な潮流を受け入れることを拒否している、と言われても仕方ないのではないか。

現在、国内の専門家を中心とする有志の活動「女性差別撤廃条約実現アクション」が進行している。生きていく上で女性が直面する問題は、家族の悩みやトラブル、地域や学校での差別、職場でのハラスメントや賃金格差など、あまりにも多く一つひとつが深刻であり、その影響を受けるのは女性だけではない。現状を放置することは、社会全体の活力を削ぎ、次世代の生きる希望を潰すことでもある。国内の取り組みだけでは社会の慣行や人々の考え方を変革するのは難しいのかもしれないが、それによる損失を考えれば、実効性の高い方法を外部から取り入れることにためらってはいられない。

2015年にやはり国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、現在は「SDGs」というキーワードが注目を浴びている。そこで目指すとされる「誰一人取り残さない世界の実現」に本気で取り組むならば、日本はまず「選択議定書」を批准することから始めるべきだろう。


国際女性の地位協会

女性差別撤廃条約実現アクション