知りたい:戦場で女性に起きること|wam第16回特別展

知りたい:戦場で女性に起きること|wam第16回特別展

東京・西早稲田のビルの1フロアに小さな資料館がある。アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(以下wam)は、戦時性暴力の被害と加害を伝える日本初の資料館だ。戦場というと、男の世界というイメージばかりが目に触れるが、そこで女たちにどんなことが起きてきたのか。(古川晶子


まんなか世代の多くは、親や祖父母世代の昔話などを通じて戦争体験に触れている。食料事情をはじめとする日常生活の制限、疎開や空襲の記憶、出征した父や兄への思いなどから、「平和」のありがたさ、「戦争は嫌だ」という話は、たいていの人が母や祖母から一度は聞いたことがあるだろう。

一方で、戦場での体験を聞いている人は少ない。その世代の男性に「敗北を語る」という習慣がないからかもしれないが、そのために私たちの戦場のイメージは、メディアによって作られたものになっている。8月になるといっせいに流される特集番組、ドラマや映画。

そこに写し出される戦場に登場するのは男性ばかりだが、実際のその場所には女性たちがいた。そのうち「慰安婦」という名称で、アジアの各地から連れて行かれた女性たちの存在は、ここ数十年でようやく認知されてきた。同時に、その存在を認めまいとする動きもある。昨年夏のあいちトリエンナーレにおける『表現の不自由展・その後』をめぐる出来事はその一例だ。

そもそも、「慰安婦」という名称からして、それがどんなものだったのかを覆い隠す言葉だ。戦場で監禁され、不衛生な環境で何十人もの男の性処理をさせられる日々には「慰安」などない。女性たちは「戦時性暴力」の被害者だ。性感染症・妊娠や流産・兵士の暴力、さらには交戦などにより多くの女性が負傷または死亡した。さらに日本軍の敗走の際はその土地に置き去りにされ、生き延びて故国に帰ることができても元の生活には戻れなかった。この人権侵害に対して、日本政府による公的な謝罪および補償は、現在に至るまでなされていない。

現在、wamでは第16回特別展「朝鮮人『慰安婦』の声をきく|日本の植民地支配責任を果たすために」が開催されている(2020年8月末までの予定)。公開証言をした朝鮮人「慰安婦」被害者183人の「声」をはじめ、この被害が実際に起きたことを示す、貴重な資料の数々を間近に見ることができる。

館内に展示されている被害女性の顔写真には、微笑むものがいくつもある。それは公開を承諾した女性たちが声をあげるまでを支えた、人々や出来事への信頼からの表情だ。また、そこここに置かれている夥しい資料ファイルには、誠実に調査を重ねるwamの姿勢を感じる。「慰安婦」問題を否定する人々はどれだけの根拠をもってそうしているのか、と思わずにいられない。

「平和」「民主主義」の国をうたう日本が、そこで暮らす私たちの目から隠そうとしているものとその意味を知る手がかりが、この資料館には確かにある。戦争によって人生を破壊された女性たちがいる、その事実にまずは触れてほしい。そして自分や大切な人が「有事」の際にはどう扱われることになるのか、についても考えてみてはいかがだろうか。


アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(公式サイト)