まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒント Vol.6(下)

「公務員=リスク」という、もやもやした不安への向き合い方を学びたい。
そのヒントを求め、埼玉県鶴ヶ島市へ。
地域で多様な子育て支援を行う「NPO法人カローレ」を運営する浅見要さんを訪ねました。

まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒント Vol.6(上)の続きです。


-学童保育の話に戻りますが、法人化されたのはどのような経緯ですか。

「保護者の共同運営」という昔ながらの幻影をみたいなものを引きずるのはどうかと思っていました。ただ、保育内容とか子供たちの目線に立った保育をしていくことについては異論がないので継承しています。経営する側の意識を向上させ、運営方法をもっと勉強して競争に勝てるようにと考え始めたことが法人化のきっかけです。
「保護者の共同運営」っていう言い方はいいのですが、責任を持って事業を進めるためには別のスキルが必要です。みんなでワイワイ話をしながら進めて、当事者が自己満足しているだけでは競争に生き残れないのが、今のNPO法人の現実です。職員に対しての責任だけでなく、自分たちが提供するサービスに対しての責任があります。これまでのような自己満足、自己実現だけではいけないと思います。
NPOは今、資本力のある民間企業と競争という時代となっています。NPOとしては厳しい時代です。行政がNPOの現場を理解せずに、「非営利だから儲けなくてもいいんだよね。」という考えは、昔の夢を見ている感覚ですね。いかに競争力を身につけるのか、経営的に実績のある民間企業に対していかに差別化していくのかという理論武装がNPO側に圧倒的に不足していますね。

-児童館事業を始める時は反対の声もあったようですね。

鶴ヶ島市の指定管理者として児童館を2館運営しています。学童保育関係者の中には、全児童対策である児童館を学童保育運営事業者が行うと学童保育がなくなるのではないかと懸念する声もありました。親の就業形態に関わらず、子どもの居場所は大事です。私たちは地域で切れ目ない子育て支援事業を目指しています。

-児童館だけではなく、様々な事業を展開されていますよね。

0歳から18歳未満の子どもたちとその保護者に向けた子育て支援事業を地域で展開しています。学童と児童館のほか、0歳から3歳が対象の「つどいの広場」、コミュニティ・レストラン、保育所、子ども食堂、学習支援、放課後児童クラブ内の習い事や送迎、新潟県長岡市の栃尾と地域交流などを行っています。

-コミュニティ・レストラン「ここほっと」を始められた経緯を教えてください。

学童保育内に手作りおやつの専門部があるくらい、学童保育では手作りおやつにこだわってきました。子供の人数が増えたこともあり、それぞれの学童で作ることが難しくなり、おやつをまとめて作ることにしました。イタリアンレストランだった建物を借りて、そこでおやつを作って各学童に配送することになりました。この建物には広いフロアがあったので、そこで「何かやりたいね。」って話になりました。いろいろ調べていたところ、理事の一人が「コミレスはどうだろう。」と言い出したのがきっかけで、みんなで勉強しました。多様なやり方で私たちができるコミレスをやっていこうと思っています。「ここほっと」は地域の方が立ち寄られ、地域に開かれた場所として、カローレの窓のような存在となっています。

-学習支援事業も始められたのですね。

市の委託事業として中高生の学習支援事業を始めました。学習支援事業を始めて、貧困の一断面が見えてきました。学童でも貧困の問題があるのは分かっていましたが、リアルには見えていなかったです。私たちの学童は美味しい手作りおやつを提供してきました。その経験を活かし、おそらく全国で初めての食事付きの学習支援事業を始めました。マンツーマンの学習のほうが本当はいいのですが 、子どもたちを教える学生を集めることが難しいと考え、Eラーニングを導入し、自主学習を中心に事業を始めました。現在では2か所で70名くらいが通っています。子どもの貧困対策は『「食事」と「遊び」と「勉強」のある「居場所」』と考えています。カローレが行っている子ども食堂は学習サロン付きで行っています。このような支援は中学生からでなく、小学生の段階から行ったほうがより効果が高いと考え、実施しています。貧困の問題は見えにくいけれども現実はかなり厳しくなっています。「親だけで子どもたちを育てる」という考え方でなく、「親と一緒に社会が子どもたちを育てる」という考え方にシフトしていかなければならないと思っています。まだまだ、「親がやるべき」との考えの方が多いのが現状です。子どもたちの現実を伝えていかないと理解が広がらないですね。私たちとして何ができるのか考えているところです。

-今後どのようなことにチャレンジしていきたいですか。

障がいを持つお子さんが安心して過ごせる放課後の居場所の準備をしていて、埼玉県川越市でもうすぐ始まる予定です。それから日常にある社会的な課題を解決するための事業を継続して取り組んでいけるよう、事業型のNPO法人のネットワークを作りたいですね。これまでNPOとして継続して事業を行ってくためのスキルは手探りでした。私たちのモデルになるようなNPOを知りたいです。

-まんなか世代に一言お願いします。

若い頃から、どんな状況でも前向きに取り組むマインドが一番大切と考えています。どんなことでも自分なりに工夫してやってみれば学びがあります。辛い、苦しい経験も修行と思えば必ず得るものがあります。大変なことも多い子育てですが、子育てを楽しめるようになることは、前向きに取り組むマインドを育てる良い機会です。困った時は一人で抱えずに周囲の力を借りることが大事です。

 

宇宙(そら)の旅日記
浅見さんはサードプレイスの学童保育というリアルな現場で培ったノウハウを公務員として本業に活かし、本業ではサードプレイスでの経験をもとに、市民の方とともに新たな事業を立ち上げられました。浅見さんのようなキャリアの築き方は、私だけでなく、これからの公務員のモデルの一つではないでしょうか。
学童保育の卒業生が今、カローレで働いているそうです。地域に必要とされる事業を責任持って続けていく、地域で働く場を作っていくためには、どのような組織であれば持続可能かを真摯に考え続け、実践されている浅見さんの生き方は私の理想そのものです。


上木宇宙〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
平日は、パッとしない公務員。土日は、「人生100年時代」の旅人。元気な100歳、『百寿者』を目指しています。まずは、健康第一。85歳までは、ほそぼそ働き続けたい。定年後、私ができる仕事は?人生100年時代、公務員の2大リスク「定年制」と「副業禁止」。その壁は壊さずに、なんとかよじ登ってみたい。登った先に、どんな景色が見えるのか?私の知らない景色を見ている、憧れの人生のセンパイたちを訪ねます。
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