知りたい:ハロワ相談員の悲痛~「非正規」は誰の問題か

知りたい:ハロワの現場から~「非正規」は誰の問題か

ハローワーク(以下ハロワ)は就労支援と雇用支援の両方を担う公共機関だ。全国各地で、職を求める人と人を求める企業をつなぐために、求人情報の収集と提供、相談支援、雇用と労働にかかわる最新情報の周知など、多岐にわたる業務を行う。また、職業訓練校など関連する公共機関とも連携している。そのハロワの窓口で、様々な状況に対応している相談員は「非正規」雇用の当事者だ。不安を抱える求職者が頼りにしている担当者は、次に来たときいないかもしれない・・・そんなことが当たり前でいいのだろうか。(古川晶子


ハロワで働く相談員の多くは「期間業務職員」という位置づけだ。期間の定めがないのがいわゆる「正社員」で、「期間業務職員」は「非正規」雇用の当事者である。期間は1年から3年というところが多く、いずれも期間が終われば雇用関係は白紙に戻り、新たに公募が行われる。次期の公募は当期中に行われるので「期間業務職員」が自分自身のポストの求人情報を扱うことも往々にしてある。退職の意志があり後任を探すのならともかく、続けて働きたいのにその職の求人情報を利用者に提供しなくてはならないのだ。

雇用と派遣に関する法改正により、企業は一定の条件を満たした「非正規」雇用の対象者を「正規」雇用に切り替えるよう促されている。しかし、その指導を行うハロワで働く「非正規」の相談員は、その対象ではないと解釈され、雇止めが堂々と続けられている現状がある。
「雇止めに関する客観的な評価基準はない、というのが当事者の実感です。そのタイミングで着任している正規職員の価値観や感情によって、だれがどんな理由で雇止めになるのかが違ってきます」というのは非正規労子さん(Realvoice)。現場で働く相談員でもある労子さんは、管理者である正規職員の価値観や感情に、性差別の意識が見て取れる点を特に問題視している。

「男性上司のお酒につきあわなかったら雇止めに」「個人情報漏洩のトラブルが起きた際、男性相談員はお咎めなしで女性の相談員だけが雇止め」「雇止めが行われたポストの後任は男性上司と親密な関係にある女性」などというのは、どこの職場でもあってはならない、まして公共機関であればなおさら許されないことではないかと思うが、多くの相談員が現実に直面している事態だという。中には雇止めを告げる際に「あなたはダンナさんがいるからね」とそれが理由になるかのような発言をされたという報告もある。雇用と配置は配偶者の有無ではなく、当人の職務スキルと実績で判断するべきなのはいうまでもない(ついでに言えば「ダンナさん」という言葉も性差別と直結している)。

このような雇止めが横行すればいい結果につながるはずがないが、その負の影響は住民サービスに表れるという。雇止めへの恐れから上司の顔色を見て判断や行動を決めるようになり、相談業務の質が変容するのだ。例えば、就業支援の成功率という「数字を上げる」ことの優先順位が高くなる。具体的には、家族状況や病歴などにより長期にわたる多様な支援が必要な相談者は避けられがちだし、すぐに就職できそうな相談者だと思えば取り合いになるのだという。
また、相談員自身が持つ性差別の意識が是正される機会も失われる。同じ「期間業務職員」でも、大企業出身の年配の男性と、子育て期間は「専業主婦」だった女性の間に力関係が生まれやすい。男性相談員が窓口やセミナーで差別的な言動をしても、女性相談員は遠慮してあまり指摘しないという。この点でも住民サービスの質は悪くなる。

労子さんは「私たちの願いは、ハロワが本当の意味で、困難を抱える住民や企業のための機関になることです」という。真摯な志をもって働く相談員が、利用者のニーズや支援の意義を理解しない管理者の浅薄な判断で雇止めになる現状を変えるべく、雇止め問題について提言する活動を準備中だ。活動の情報はFacebookアカウントで発信される。問い合わせはmessengerで受け付けている。


非正規労子|非正規のおしごとカウンセラー(Facebook)

おとな食堂(Facebookイベントページ)

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