まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒント Vol.3(下)

「公務員=リスク」という、もやもやした不安への向き合い方を学びたい。
そのヒントを求め、国際学院埼玉短期大学へ。
小児医療センター内にある「おかしやマーブル」の生みの親、小川正さんを訪ねました。
まんなか世代の公務員が探す『この先』のヒントVOL3(上)の続きです。

<小川正さんのプロフィール> 
現在、国際学院埼玉短期大学勤務。
大学を卒業後銀行へ就職。すぐに思い直し埼玉県庁へ。
埼玉県庁では様々な部署を経験。さいたま新都心がまだ名もないころの起工式や国の官庁の移転準備を担当。
統計課では埼玉大学が開発した「地理情報分析システムMANDARA」の普及、埼玉県の景気動向指数を復活させる。
そのほか、埼玉県立大学の改革、福祉施設の監査、女性の就職・キャリア支援、埼玉県立小児医療センターの
移転などの仕事に従事したのち、2017年3月埼玉県庁を定年退職。

- 福祉施設の監査の仕事もされていますね。

通常の監査では出来ていないことを指導します。 私はそれだけでなく、それぞれの施設の良いところを見つけて、それをほかの施設にも伝えていくようにしました。良い点を軸にして出来ていないことを直してもらう。そのため、良い点をホームページで公表することにしました。実際やってみると出来ていないことを見つけるのは簡単ですが、良い点を見つけることは意外と難しいんです。良い取り組みは表に出ているとは限らないので、施設の方からのヒアリングや現地を訪問するなかで気づく力が必要とされていますね。
(埼玉県庁ホームページより:社会福祉法人・社会福祉施設事例)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0606/fukukan-22-jirei.html

このころマーブルの前身といえるような作業所との出逢いがありました。ちょうど障がい者施設が授産施設から作業所へ立ち上がる時期でした。話を聞いてみると、美味しいクッキーやパンを作っているところは本格的な設備があるとか、専門の方が直接指導しているとかの特徴がありました。
「食べるものは正直だから誰が作っても同じ。障がい者が作っても、健常者が作っても美味しいモノであれば適正な価格で売れる。」という、福祉施設の理事長の言葉が今のマーブルのイメージに繋がっています。

-どんな仕事でも小川流になりますね。

前任の方とおなじような仕事したくありません。新しい職場では、担当する事業の対象、目的、手段を全部バラバラにします。それを自分で再構築しています。担当者でいる間に前任者がやり残した仕事を少しでも良い状態にしたい。また、引き受けたことは思いっきり全力で取り組む。自分自身で「できない」と決めつけないことですね。意外とできるものですよ。ある程度の形にすれば、慣性の法則で続いていきますから。あまり良いことではありませんが、行政はいったん始めると止めるのが難しいですからね。

-小川さんのそのお仕事ぶりですと部下や周囲の方は大変だったのではないでしょうか?

職員がやっていないことをするのが自分の仕事としていました。自分で始めたことは自分がやっているので苦労を気にしていません。やらなければならない決まったことは他の方がきちんとやってくれている。私は部下の仕事にはあまり口を出しません。みなさんそれぞれ一所懸命仕事をしていますから。

-小川さんが考えるこれからの公務員像はありますか。

みんなが役所のトップになる必要はありません。役所の仕事は幅広くどこかで繋がっています。その時その時、自分なりに真剣に取り組んでいれば仕事の問題点に気付く感覚が研ぎ澄まされます。その気づきを率先して解決できるような企画を職場や地域で立ち上げ、人を繋ぐような地域人材をこれからは育てていくべきですね。

-人との出逢いで心に残っていることはありますか

自分にできないことをさらっとされている方は凄いなあと思います。その仕草や後ろ姿に観音様を思い浮かべた方に何人も出逢えました。そのたびに自分も頑張ろうと思いました。

-最後に私たちまんなか世代へメッセージをお願いします

自分のアイディアが形にならないことやままならないこともあるかと思います。しかし、アイディアを持ち続けていると繋がる時があります。諦めずにそのアイディアを温め続けることが大事ですね。
私は異業種のプロと出逢うために歌舞伎や文楽に時々通っています。主役でない人も真剣に演じています。自分の成果が出ないときのモチベーションになりました。
これからは「男性が家庭で輝ける社会の実現」をめざすべきですね。「女性が社会で輝く社会の実現」のアンチテーゼですけれども。料理や菓子づくり、洗濯、アイロンがけ、庭仕事、ごみすてなど、家庭で自分ができることを増やしていくべきですよね。


摺り漆にいそしみ、木と会話するのが楽しみとのこと(小川さんの作品です)

宇宙(そら)の旅日記
インタビューを依頼したところ、私からお願いした資料だけではなく、いくつものメモを送付してくださいました。SDGsの17目標ごとに自分がやっていることをまとめたもの、小児医療センターでの仕事をまとめたもの、ぼっーとした時の作り方・過ごし方など。そのメモから小川さんをより深く知ることができました。
いつでも相手の期待以上のことを返してくださる。このようにして仕事を積み重ね、信頼関係を築いてこられた小川さん。
かつて、私は小川さんの部下でした。グループの中で小川さんは女性の中で黒一点。お休みの日に作られた手作りケーキとハーブティーを振舞いながら、私たちの話を聴く場を作ってくださいました。与えられた仕事は任せてもらっていたので、やりがいをもって働くことができました。
お送りいただいたメモの中に、小児医療センターでの「未完」の事業の記載がいくつかありました。「ボランティア活動支援のファンド整備」、「若年無業女性の勤労体験の場の提供」について、いつの日か小川さんがクッキープロジェクトのみなさんとともに形にされるのではと期待しております。


上木宇宙〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
平日は、パッとしない公務員。土日は、「人生100年時代」の旅人。元気な100歳、『百寿者』を目指しています。まずは、健康第一。85歳までは、ほそぼそ働き続けたい。定年後、私ができる仕事は?人生100年時代、公務員の2大リスク「定年制」と「副業禁止」。その壁は壊さずに、なんとかよじ登ってみたい。登った先に、どんな景色が見えるのか?私の知らない景色を見ている、憧れの人生のセンパイたちを訪ねます。
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