知りたい:働き続けたい!「非正規公務員」の叫び

知りたい:しっかり働きたい!非正規公務員の叫び

「日本にはかつて身分制度があった」ということになっている。では、現在は万民平等なのだろうか。様々な場面で、本質と無関係な理由を挙げて不利益を押しつけられるということが現にある。その一つが働き方だ。「雇用身分社会」という言い方もあるくらい、常用雇用と非正規雇用の間には大きな溝がある。いま「働き方改革」の陰で、多くの非正規雇用の当事者が圧迫されている。「非正規公務員」も例外ではない。(古川晶子


「非正規公務員」は、今や全国の行政の本庁と出先機関に存在している。地方公務員法には、産休代替職員などの他に、特別職非常勤職員という枠組み(地公法第3条第3項第3号)があるが、そのどちらでもない「非正規公務員」がいる。長年、この立場で働いてきたある人から「実際には一般職と同様の業務に就く職員が、いわば”脱法的”に存在し、増加してきたのです」という言葉を聞いた。

もともとは何かの都合で生じた欠員を一時的に埋めるようなものだったのが、2005年に始まった「ネオリベ改革」以降、常用雇用の公務員の定数が削減されるのに伴い、年々拡大していったという。ほとんどの自治体では、非正規雇用の職員の配置や職務内容、待遇などについてはそれぞれの所管課が「設置要綱」などの手続きで定めていて、全体数の把握もされていないことが多い。

2005年から総務省が実数把握のための調査を行っていて、それによれば2005年には45万人、2016年には64万人と、11年間で4割の増加がみられる。この数値は「調査基準日」が常用雇用の職員と同じ4月1日になっているなど、実態にそぐわない項目が設定されているため、実際はこれよりさらに多いと推測されるが、傾向は概ね当たっているだろう。ちなみに64万人中48万人すなわち7割以上が女性である(逆に常用雇用の公務員は7割以上が男性)。

調査によれば、「非正規公務員」の報酬は、常用雇用の3分の1から4分の1という額である。また、雇用の期間はほとんどが1年ごとで、更新は可能であっても、昇給や退職金などは設定されていない。職種は、一般事務職員のほか、技術職員、医師、医療技術院、看護師、保育士、給食調理員、技能労務職員、教員・講師、などがあるとされているが、専門職がかなりの割合を占めていることに驚かされる。また、ここに項目として設けられていないソーシャルワーカーなど相談・支援の職種も、高いレベルの専門性と経験を求められる仕事であるから、まだまだほかにもあるのではないだろうか。

専門職が多いのは、行政の財源が縮小される中で、応急措置として行われたことが定着したためだろう。常用雇用の職員が担っていた業務の担当者が非正規雇用の職員に置き換えられた、新たな「行政需要」が発生したが常用雇用の職員が増やせず専門性を持つ人員を非正規雇用で導入した、など、それぞれの経緯があるものと思われる(後者の場合には、民間委託や指定管理などの形で対応している例も多く、そこで働く人々の条件はさらに不安定だ)。

昨年、ある公共施設で「非正規公務員」の立場で働く人たちが、自らアンケート調査を実施した。そこから明らかになった「非正規公務員」の望みのうち、最も多く聞かれた声は「この仕事を安定的に続けていきたい」というものだったという。「非正規公務員」の多くは、地域住民に最も近いところで働き、住民のニーズを直に感じる立場にある。行政が住民に提供するものは、そこで暮らしていくためのインフラやセーフティネットにあたる。中には数年越しでサービスを利用しながら問題を乗り越えていく住民も少なくない。その意義と責任の重みを感じ、積極的に働いて業務の質を向上させている「非正規公務員」は、金銭的報酬が常用雇用の職員の4分の1であっても「安定的に続けていきたい」と考えているのだ。

これはもちろん「報酬の多寡にかかわらず人のために尽くす」というような美談ではない。じつは「非正規公務員」の7割以上を占める女性は、現在の金額以上の報酬を、これまでの人生で経験していない人が多い。また、同年代、同一労働、あるいは専門性や経験などで比較すれば付加価値において自分よりも低いような仕事に携わる常用雇用の職員の給料や賞与、休暇そのほかの福利厚生について知る機会もない。だから待遇の話が出てこないだけだ。「家計の補助」にとどまらざるを得ないような金額で、病気で休めば即報酬に響き、少し長引けば職を失う。そのことに気づけば、あるいはアンケートの結果は異なるものになるかもしれない。

現在、そんな「非正規公務員」の先行きについて不穏な動きがある。2017年に改正された地方公務員法は、行政職員の「働き方改革」のためのものとされ、「非正規公務員」については「会計年度任用職員制度」を導入することとされている。これを各自治体でそれぞれ運用する際に「非正規公務員」の「安定的に続けていきたい」という望みを叶えるものになる保証はない。職場の生き字引のような職員、地域住民にとってはセーフティネットそのもののような職員であっても、あっさり終了、ということが合法的に行える「期待権」を発生させない仕組みがつくられていくのではないか、という懸念があるという。

人が仕事に求めるものは様々だが、働く喜びとして共通するのは「自分が提供する価値を認められ、評価され、その結果としての報酬を得ながら今後の展望を描く」ということではないだろうか。現在、それぞれの場で地域住民の暮らしを支える仕事を担っている「非正規公務員」が、「非正規」であることを理由に働く喜びを奪われるような社会は、あからさまな「雇用身分社会」だ。私たちは、公務員というと民間とはちょっと距離がある存在で、直接には関係ないと思いがちだが、この「改革」の結果が行政サービスの質の低下という結果につながることを思えば、関わらない人は一人もいない。


総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」

公務労組連絡会「非正規公務員酷書」