ヒトリおしゃべり考房 Cinéma de carrière 第1話

ヒトリおしゃべり考房 Cinéma de carrière_第1話

健康志向の高まりや医学の進歩、医療機器の開発など様々な要因はあるかと思いますが、私たちの平均寿命は飛躍的に延びました。日本で平均寿命が50歳を超えたのが1947年だそうです。そして2017年になると84歳ですから、70年の間に34歳も平均寿命が延びたのですね。ちょっとビックリします。さて、みなさんは「人生100年」といわれて、ワクワクしますか?それとも?

私は今月54歳になったばかりの「まんなか世代」で、どうやらまだこの先40年くらいはありそうです。「いや~ワクワクするなぁー」と言うとやっぱり嘘っぽい感じを覚えますが、同じ生きるならイキイキと過ごしていたいなぁとは思っています。では、「まんなか世代」が人生後半をイキイキと過ごすために今からやっておいたほうがいいかもしれないことって何だろう?という問いを、映画「ネバーエンディング・ストーリー」を材料にしておしゃべりしてみます。

nothing(無)に世界が覆いつくされて消えていこうとしている国ファンタージェン。唯一人その危機を救える力を持っている幼い女王は死の病に。女王の命を救う手立てを求めて、一縷の望みを託され旅に出た少年勇者アトレイユ。苦難を乗り越えて手にした女王を救う手立ては新しい名前をつけること。 ある時、いじめっ子たちに追われていたパッとしない読書と空想が好きな少年バスチアンは、逃げ込んだ古本屋でこんなストーリーの本を手にした。夢中で読みふけるバスチアンは、気づくといつの間にかそのストーリーの中の重要な登場人物に・・・

というのが映画「ネバ―エンディング・ストーリー」の骨格です。児童文学としてチョー有名なミヒャエル・エンデの『はてしない物語(邦題)』が原作だということをご存知の方も多いと思います。
現実の世界の人たちが夢や希望を失ってしまったことで、物語の中のファンタージェンという国がnothing(無)の力によって消滅しようとしているという設定です。

さて、ここからが「ヒトリおしゃべり考房」の世界、イメージを膨らませていきたいと思います。ここで問題。女王に新しい名前をつけるとどうなる?三択で考えましょう。
A:nothing(無)が消えてなくなる
B:女王の病が癒えて元気になる
C:活躍を称えられたアトレイユが女王と結婚して力強い王となる
どれも、物語にはありそうな展開ですが、私はBを選びます。Aは「名前を変えたら運が開けました!」みたいで短絡的でいかがわしい勧誘みたいだし、Cだと “あの人だからでしょ”というヒーロー&ヒロインの武勇伝になっちゃって、他人ゴトっぽいですよね。
新しい名前をつけたら女王が元気になって力を発揮する。その姿を現実の世界に無理矢理はめ込むとしたら、どんな状況が当てはまりそうでしょう?今までとは違う肩書・名刺(新しい名前)を得て活動することで、気づいてさえいなかったかもしれない力を発揮して新しい領域や分野で活躍する姿と捉えてみることができるかもしれません。もともと情熱や力を持っていても、これまでの積み重ね(成功・失敗の体験)や慣習、しがらみ、まわりからの期待、自分自身の思い込み(メンタルブロック)などにしばられて、いつの間にか窮屈さを背負い込み疲弊していく。私はなんとなく身に覚えがあります。力を奪われる側としてはもちろんですが、自分でドキッとしたのは、もしかしたら私が誰かの力を奪ってしまうnothing(無)を生み出すことに加担してきたかも、という可能性に気づいたことです。みなさんは身に覚え、いかがですか?

試しに、自分に新しい名前(肩書)をつけてみてください。ちょっと照れくさかったりするかもしれませんが、自分や周囲の人たちのしばりからフッと解放されたような感覚を味わうことができるかもしれません。二枚目の名刺を作るときにやることは「キャリアの棚卸し」です。これまでの自分を振り返って、知識やスキル、経験、成果、経歴などのワークキャリアに関するものだけではなく、好き、やりたい、行きたい、得意、誇り、憧れ、譲れない、在りたいなど、ライフキャリアにかかわる思いや信念、価値観も全部ひろげるのがコツです。この作業はひとりでは難しい場合もあるので、誰かの手をかりるのも一つのやり方です。ちなみに、大学職員という職業上の肩書を持つ私の二枚目の名刺、新しい名前は「まちのキャリアデザインマスター」です。ちょっとはずかしいという感じもあるのですが、自分でしっくりする新しい名前を付けると使いたくなるというのも本音です。これまでとは違う人に出会い、違ったコトが起こるようになり、少しだけ世界が違って見えてくるのを体験できるだろうと思います。二枚目の名刺をつくってみる。「まんなか世代」がこれからイキイキと暮らしていくヒントを掴むために今からできることの一つかもしれません。

ところでファンタージェンを覆うnothing(無)の正体って何でしょうね???
私ははじめ、単純に有るものが無くなる、ブラックホールのように有るものを吸い込んで全てを無にしてしまうようなイメージでとらえていました。けれど、これまでの積み重ね(成功・失敗の体験)や慣習、しがらみ、まわりからの期待、自分自身の思い込み(メンタルブロック)などがnothing(無)を生み出しているのだと考えたとしたら、それは「有→無=失」ではなくて「有→有=停」だと捉えたほうがいいように思えてきます。人や社会が成長し成熟していくプロセスでnothing(無)がひろがって、その世界では新規性は生まれない。ただただ、いま有るものが変わらずにそのまま有ることだけを願い、守ろうとする時間が延々と積み重なる。ファンタージェンの国が直面していたのはこんな危機だったと考えることもできるかもしれません。そんな危機を乗り越えるために必要だったのはイノベーション?じゃあ、ファンタージェンにイノベーションを起こしたのは誰?

次回、映画「ネバーエンディング・ストーリー」de人生100年時代(下)でおしゃべりします!

 


中村容〜執筆者プロフィール〜
中村 容(なかむら よう)
学生の就職支援に携わったのをきっかけに、働き方や暮らし方の選択をとおして人が成長していくプロセスに関わるキャリア支援の魅力にはまる。現役世代のキャリアシフトを支援する「まちのキャリアラボ」や小さな映画館シネコヤで映画作品から暮らし方や生き方を考えるイベント「おしゃべり考房」など、地域をフィールドにキャリア支援に取り組んでいる。地域活動での肩書きは「まちのキャリアデザインマスター」。本業は大学職員。

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