知りたい:洪水ハザードマップの役割とは?

知りたい:洪水ハザードマップの役割とは?

「天災は忘れたころにやってくる」というが、近頃は忘れる暇がないほど災害が多い。災害対策には、行政による取り組み「公助」と個々の備えによる「自助」が大切だという。しかし私たちは、自分の身に迫るまで災害のことをあまり考えない。よくないと薄々わかってはいるが、ではどうしたらいいのだろうか。5月末、狭山市議会に「洪水ハザードマップの見直しと避難対策の強化について」請願書を提出した「さやま水防検討会」代表の竹洞賢二さんに聞いた。(古川晶子


―「さやま水防検討会」とはどのような会ですか?

現在のメンバーは5人です。副代表は地元漁協の総代で、市議会の議員を3期つとめたこともあり、河川に造詣の深い人物です。そのほか、ケーブルテレビ局出身で地域防災の課題に関心が深い人、都市デザイナー、水害の危険が高い地域の住民がいます。私自身は15年前から環境関係のボランティア活動をしています。

―精鋭ぞろいですね!会が始まったのは何かきっかけがあったのですか?

2018年7月の西日本豪雨災害です。ハザードマップ上で危険だと表記されていたところで、多数の犠牲者が出たことを受けて、「狭山市はどうなんだろう?」と、副代表がSNSで発信したことから、仲間が集まりました。

―漁協の方だと説得力ありますね。

2018年8月から、月1~2回のペースで朝活をし、4か月かけて狭山市役所発行の「入間川洪水ハザードマップ」を精査し、その有効性を検討し、検討内容をもとに論文を執筆しました。請願書を書く際には、それを参考文献として添えることができました。

請願書は3月議会に間に合わせたかったのですが、力不足で及びませんでした。4月の統一選の最中は、狭山市市議候補者全員に面談して、請願内容の説明と理解を求めました。その上で、6月議会に向けて書類をまとめ、提出しました。それまでに、議員の方々にはじゅうぶん理解していただいていたので、受理・審理に進むことができました。

―竹洞さんの役割はどんなことですか?

副代表と一緒にロビー活動をしました。議会棟に私のような一般市民がウロウロしていること自体、議員の方々には異様に映ったようです。私たちの真剣さが伝わったのではないかと思っています(笑)

―6月議会で受理された請願書は、その後どのように取り扱われるのでしょうか。

市議会として、行政に請願内容の精査とその結果としての対策を議会に報告する指示を出す形になるかと思います。

―請願の中で、最も早期に実現してほしい点を挙げるとすれば?

現行のハザードマップの早期見直しです。

―具体的にはどんなことですか?

狭山市「入間川洪水ハザードマップ」には、入間川に流れ込んでいる中小河川の情報が網羅されていません。過去、電車が止まる等の被害も出てますが、その箇所が示されていません。「地元だから分かっているでしょ」という認識ではなく、明示することが、避災への第一歩だと考えています。

―ほかにはどんなことがありますか?

狭山市における過去の経験を踏まえた情報が入っていません。例えば、地元では暴れ川で有名な不老川がありますが、その氾濫情報が全く入っていません。また、荒天時のハザードマップなのですから、内水氾濫の情報も含めるべきです。アンダーパス(立体交差の地下通路)の冠水や、雨水マンホールからの水の吹き出しで道路が冠水する恐れがある、などの情報が必要です。

―ハザードマップは災害が発生した場合を具体的に想定したものであるべき、ということですね。

また、避難所の確保も不足です。溢水危険予想地点には避難所がありますが、市役所の情報では避難者収容数が世帯数で表示されています。避難世帯の構成を把握していないことがうかがえます。世帯の中から一人だけが避難することはおよそ考えられませんから、世帯数の数倍の避難者がいるはずです。避難所のスペースは、マンション一棟分の避難者にも対応できないようなものばかりです。劣悪な環境は、避難生活からの二次被害も生み出します。

―恐ろしいですね。どのような対応を求めていらっしゃいますか。

現在、設定されている避難所では役に立たない。では、どうするか?という問いに答えるのが行政の役割「公助」だと思います。もちろん「公助」は万能ではないので、市民の側にも「自助」の理解と努力が必要です。しかし、すべての対策のベースになるハザードマップの精度を上げるのは「公助」の範囲です。それができてこそ「自助」が可能になります。

―「さやま水防検討会」の活動は、今後どんな展開を予定していますか?

ハザードマップは随時アップデートされないと意味がありませんので、今回の請願で終了にはなりません。その点をご理解くださっている議員の皆さんが、行政ににらみを効かせていかれると思います。私たちはそれと並行して、行政への助言や、市民の啓発をしていくことが必要だと考えています。

―啓発とはどんな取り組みでしょうか。

専門家を招いた講演会、避難経路の確認のための防災ウォークの実施、行政との協働での地域防災計画策定などが考えられます。「自助」の主役は当事者である地域住民なので、私たちは黒子に徹して活動していきたいです。


何事もない普段の生活は、住居、交通、職場や学校など、網の目のように張り巡らされたインフラによって成り立っている。ひとたび災害が起きれば、それらは簡単に破れほころび、命さえも危うくなる。「さやま水防検討会」の活動は、その綻びをできるだけ少なくするための重要な取り組みだ。精鋭ぞろいの5人、というとなんとなく戦隊ヒーローものを思わせるが、「黒子に徹して」と言われるところに、大きな説得力を感じた。

令和元年第2回定例会【議案】(狭山市役所公式サイト)
請願「狭山市の洪水ハザードマップの見直しと避難対策の強化について」の概要が掲載されている

入間川洪水ハザードマップ(狭山市)をご活用ください(狭山市役所公式サイト)
最新のハザードマップが掲載されている