知りたい:幸せな選択肢が増える「パートナーシップ制度」

レインボーさいたまの会

今年の5月から、埼玉県内の市町村長宛に「パートナーシップ制度」の導入を求める要望書が順次、提出されている。同性カップルに、男女の婚姻と同じような扱いを認める制度だという。要望書の発信元である「レインボーさいたまの会」代表の加藤岳さんに聞いた。(古川晶子


―「パートナーシップ制度」について教えてください。婚姻と同じと考えていいのですか?

「パートナーシップ制度」は総称で、自治体によって呼び名が異なります。渋谷であれば「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」、世田谷であれば「世田谷区パートナーシップの宣誓の取り扱いに関する要綱」などという呼ばれ方をされます。婚姻と同じものではありません。

―「パートナーシップ制度」と婚姻はどのような違いがあるのでしょう

簡単に言うと、同性カップルにかかわる権利と義務について、異性婚と同様に同等に扱い、法的保障を伴うのが婚姻、法的保障はないけど自治体レベルでそれに近い保障をしようというのが「パートナーシップ制度」です。 法的保障が一切ありませんが、パートナーシップ制度で、公的な機関から認めてもらえたという「社会的承認」は、当事者にとって大きな、生きる希望となります。

―「社会的承認」が生きる希望となるのですね。保障はどんなことを?

例えば、同性のパートナーが緊急入院して病院に運ばれ、病院側から「あなたは親族でないため病室に入れることはできません」と拒否されるケースがあります。実際に私の知り合いで、パートナーの死に目に会えなかったという当事者の方がいました。もし自治体が「パートナーシップ制度」を導入すれば、このような場合に同性カップルはパートナーシップ制度のカードを見せて病室に入れるようになります。 ほかにも、保険金の受け取りが可能になる、公営住宅での同居が可能になる、などがあり得ます。

―現在の婚姻は、男女の2人が生計を共にすることを、法的に応援しているわけですね。

婚姻は国が定める法律に基づきます。「パートナーシップ制度」の裏付けは、自治体による条例あるいは要項です。

―条例と要綱はどんな違いがありますか?

内容は似ていますが、決定のプロセスと重みが違います。条例は議会での採択が必要で、時間をかけて審議し、議員を含めた議会が承諾したという重みがあります。一方、要項は首長の判断で導入が可能です。条例に比べてすぐ実行が可能ではありますが、賛成する議員や担当課の理解が追い付いていない場合は、運用がうまくいかない場合が出てきます。

―首長と議員が足並みそろってないと、定めても実際の場面で効力を発揮しないのですね。

野球で言うと、スリーアウトをツーアウトに変えるには条例。真夏の試合の途中に水休憩30分いれるのは要項みたいなイメージでしょうか。現在、制度を導入している自治体の多くは要項で対応しています。東京の渋谷区と豊島区は条例で「パートナーシップ制度」を定めています。

―加藤さんが野球経験者だということがわかりました(笑) 

ずっとサッカー部です(笑) 野球のたとえはとある市議会議員に教えてもらいました。

―「パートナーシップ制度」導入に反対する意見がありますね。当事者の考え方も一様ではなく、制度や法律にもの申すことに積極的でない方もいると聞きます。加藤さんたちが制度を変えたいと思われるのはなぜでしょう?

制度を変えるといっても、特別な権利を求めているわけではありません。我々が伝えているのは、様々な不平等を受けている人たちに平等な権利を与えないといけませんよね、というだけです。同性愛者にも、シスジェンダー※と同じ、異性愛者と同じ保障をしてほしいだけです。
※シスジェンダー・・・生まれたときに診断された性別に違和感を感じることなく生きていること
先ほど挙げた病院のことだけでなく、職場の慶弔休暇や相続など、不平等による不利益はたくさんあります。反対する人に迷惑はかからないし、制度を使いたくないカップルは使わなければ良い話です。異性愛で事実婚を選ぶカップルと同じことです。

―声をあげられない方も含めて、生きやすい社会を求めるということですね。

はい、多様性を認め合う社会の実現ですね。ただ、私にはよく理解ができないのですが、一部には「伝統的な家族観が崩壊してしまう」「LGBTが増える」「住民の理解が追い付いていない」などという理由で反対する方々もいます。今は21世紀ですよ・・・いつの時代の話をしているのかと思います。「パートナーシップ制度」も同性婚も、幸せな選択肢を増やすだけ。

―幸せな選択肢。いいですね。

誤解をしている方がいますが、同性カップルは異性を愛する人達に何の危害も加えません。世の中が同性カップルだらけにはなることはあり得ません。少子化に繋がらないし、エイズも増えませんし、天変地異も起きませんよ。逆に以前より笑顔が増える社会になることを断言します。

―笑顔が増える社会とは?

愛する人と生活を共にすることが、性自認や性的指向にかかわらず祝福される社会です。私の家族にFtM※当事者がおり、そのパートナーのご両親は勘当という道を、今は選ばれています。
※FtM・・・生まれたときの性は女性で、男性として生きたい人
このままでは死に目にもあえません。私は実際に訪ねて対話を試みましたが、撃沈でした。「パートナーシップ制度」ができたら、同性カップルには「お墨付き」になり、堂々としていて良いということになります。それが再び対話の糸口になるかもしれません。私たち家族にとっては、ご両親の理解は切実な願いです。

「レインボーさいたまの会」は埼玉県内で活動していますが、全国にこのような活動が広がってほしいと思っています。理解を深めるために様々な行動をしています。家族のことをきっかけに、パートナーの郷里の当事者団体や議員と話をして、私たちの取り組みを横展開しています。国会議員にも理解を求めるロビー活動もしています。


多様な性で生きることが、いろいろな場で語られるようになってきた。「ごく一部の特殊な人のこと」「自分には関係ない」と思っている人は、そろそろ認識をあらためたほうがよさそうだ。そして「パートナーシップ制度」あるいは同性婚が成立する社会は、私たちを縛る「女らしさ」「男らしさ」をはじめとするジェンダーの問題の分厚い壁を崩す社会でもある。幸せな選択肢が増える社会は、自分のありたい形で生きていくことが当たり前な社会だ。