知りたい:カネカ「育休明けに転勤命令」問題ない?

ぱぴさんのツイート

4月23日から発信されている「育休明けに転勤命令」をめぐるツイートが、社会的に大きな反響を呼んでいる。はっきりいうと炎上している。ところが、当の株式会社カネカは「当社の対応は適切であったと考えます」と一貫して強気。それはなぜ?「みんなの総務部」加納勉さんに聞いた。(古川晶子

加納勉さん(みんなの総務部)
加納勉さん(株式会社みんなの総務部)

<経緯をご存じの方へ:青字はスキップください>

事の発端となったツイートはこちら(スクリーンショット)

ぱぴさんのツイート

この後、経緯を述べる投稿が続く。転勤の時期を1、2か月伸ばしてほしいと上長と人事に交渉したが拒否され、労働組合にも、さらには労働局にも相談したが解決の望みが見えず、「夫退職するしか無いと考えてるが、男性育休とったらこうなる、という見せしめ、事例になるのは不本意」とある。

さらに、「せめて夫ボーナスだけ貰ってから、と考えなくもないが、2歳児と3か月児抱えて、まだ完全に体戻ってない状態で、時短じゃなくフルで仕事復帰する私ひとり、ワンオペはたぶんムリ。きっとムリ、てか、絶対ムリ。 お金は大事だが、正しい選択のはず。」と、子どもと自分の命と経済的事情(始まったばかりの住宅ローン等)をギリギリのところで天秤にかけて決断したことが読み取れる。

その後、夫が勤務していたのは株式会社カネカであることが明らかになり、様々なコメントやリツイート、さらには他SNSでのシェアなどが加わってあっという間に広がった。同社のキャッチコピーである「カガクでネガイをカナエル会社」は今やこの話題のハッシュタグとして機能している。そして、いくつかの社会派のウェブマガジンで取り上げられ、6月に入ってからは朝日新聞や日経ビジネスでも記事になっている。現在、同社の株は下落しているそうで「従業員満足度」が経営の要になるという典型的な事例になり得る勢いだ。

ところが、同社は一貫して強気である。6月6日に同社公式サイトに掲載されたコメントは、同社に一切の非がないことを5項目にわたって述べ、「元社員の転勤及び退職に関して、当社の対応は適切であったと考えます。当社は、今後とも、従前と変わらず、会社の要請と社員の事情を考慮して社員のワークライフバランスを実現して参ります」と結んでいる。

これだけ炎上しているのに、まったく問題はないのか。本当に「適切」なのか? 素朴な疑問を、加納勉さん(株式会社みんなの総務部代表)に聞いた。


―この件でカネカの対応は適切ですか?

適切かどうかの判断をどこでするか、というと、企業としてはまず就業規則です。多くの会社では、社員は転勤を拒むことができない旨、就業規則に定められています。報道を見る限りでは、カネカの規則も同様のようです。ですから、転勤命令を拒否しても受け入れない、というのは、規則の上では適切だということになります。

しかし、それが社員に優しい対応か、というは別問題です。炎上しているのはこの点です。現在は株価の下落が言われていますが、今後、社員の定着率が下がり、優秀な人材の確保が難しくなることが予想されます。

―社員が働きやすい会社でいないと、業績が落ちていくということですね。

同社の場合、要因は以前からあったのではないかと感じます。6月3日に社長が社内に発信したメールがマスコミに漏れ、すぐ記事になりました。社内の情報保全体制があまり機能していないこと、社員が会社に不信感を持っていたことが推察できます。社内メールを社外に漏らしたら懲戒対象になることもありますが、それを理解していなかったか、それでもリークするほど不満が溜まっている社員がいるのか・・・

―このカップルは、家を建てて社宅から引っ越したばかりだそうです。その状態で転勤命令が出るものなのですか?

日本の企業には、家を建てたばかりの社員、子どもがうまれた社員を転勤させる、という傾向があります。「家を建てたばかり、子供ができたばかりだと、経済的に大変だから、少々荷が重い命令を出しても辞めないだろう」という考え方だと聞いたことがあります。また、長年繰り返されてきたことで「俺も不本意でも命令に従った。後輩も従って当たり前」という意識も生まれています。ワーク・ライフ・バランスが形骸化します。

―それは、従業員の健康管理やモチベーション維持には逆効果ではないですか?言葉は悪いけど、人質みたいな感じもします。

そうです。だから国際社会では、日本の会社、特に大企業の生産性は低いと言われるのです。

―トホホです(;´д`) 育休明けの転勤命令について、育児・介護休業法には抵触しないのでしょうか?

育児・介護休業法には、たしかに「育休を理由に不利益な取扱をしてはならない」「就業場所の変更で、子の養育や介護が困難になる場合はその状況に配慮しなければならない」という内容が盛り込まれています。しかし「配慮」という言葉の解釈の違いが問題になります。社員は自分たちに対する「最大限の配慮」を求め、会社は「とりあえずの配慮」にとどめる、ということになりがちです。

―何のための法律なのか・・・

そうですね。今回の件で、カネカが「適切」と言っているのは、「とりあえずの配慮」をしたけど、社員の希望には沿えなかった、どうしようもなかった、という意味に取れます。そして、それが企業側の一般的な考え方です。


「カガクでネガイをカナエル会社」には、社員の願いをかなえる意図はなかったということか。

株式会社みんなの総務部公式サイト