知りたい:「中高年ひきこもり」の生きる道は

知りたい:「中高年ひきこもり」の生きる道は

5月28日、川崎市で起きた無差別殺傷事件。近辺に住む50代の男が、スクールバスを待っていた児童と一緒にいた大人たちを襲い、死傷者は19人になった。加害者が直後に自死したため、直接の動機は解明できないが、報道は彼が長年ひきこもり状態であったことを関連付けている。そしてSNS等で「死ぬなら一人で死ね」などという言葉が多くみられる中で、6月1日には70代の父親が40代の息子を刺殺するという事件が起きた。父親が、ひきこもり状態の息子がいずれ他人に危害を与えることを恐れ、思いつめたことが原因と報じられている。

いずれの事件でも核となる人物は「まんなか世代」だ。中高年のひきこもりは「まんなか世代」のひきこもり。「死ぬなら一人で」などという言葉で片付く気がしない。生きるためにはどうしたらいいか。社会福祉士のMさんに聞いた。(古川晶子


ー中高年ひきこもりが利用できる行政サービスはありますか?

中高年に特化したものではないですが、ひきこもりの相談窓口は各地で設置されています。さいたま市では「こころの健康センター」内の、さいたま市ひきこもり相談センターです。年齢問わず受けるので、40代50代の方の相談もできます。高齢者は地域包括支援センター(さいたま市ではシニアサポートセンターという呼称があります)で相談を受けます。

ー年齢不問なのですね。

子どもから大人まで、不登校やひきこもり、それに関する不安や困りごとです。ご本人や家族、関係者の方も相談できます。大人の場合は、社会復帰にどうすればよいか、仕事をするには何から始めたらいいか、など・・・

ー社会復帰する気持ちになってから相談するところということですか?

いえ、そうでなくても大丈夫。どこに相談したらよいかわからない、という方でもアクセスしやすい窓口です。相談員がいろいろとお話を聞いて、どうしたいのか、どうしたらいいのかをご一緒に考えます。そこから必要そうな支援や求める情報が得られる専門機関にふりわけるということもあります。

ーふりわけにはどんな傾向がありますか?

傾向というか・・・お話を聞いて、それぞれの経緯や環境、ご本人の状態などを考慮に入れ、そのたびごとに方針を検討します。障害や病気が関わっていることもあります。

―具体的に紹介されるということですか?

情報提供が主です。大人の場合は長期間にわたりいろいろな要素が絡んでいて複雑ですし、ご本人の意志もありますから、相談機関が決めるわけにはいきません。ご家族からのご相談の場合は、家族の会をご紹介することもあると聞いています。

―まずは相談してみることですね。

そうです。まずはどこかとつながることかなと思います。


報道では暗い側面ばかりが強調されるが、手がかりがないわけではない。相談・支援にあたる方々が、各地で一人ひとりの困りごとに耳を傾け、対応策について知恵を絞り、心を砕いている。このことを知っておきたい。

「死ぬなら一人で」という言葉。言ってしまうのはなぜだろう。生きていれば、多少なりとも困りごとを抱えているはずなのに、他人ごとのように。もしかしたら、そう言ってしまう人は、ひきこもりや孤立という状態をとても恐れているのかもしれない。これを言うことで、自分はかかわりないと思いたいのかもしれない。

私たちは競争がある社会に生きているが、それがすべてではない。効率を求める企業でつくられた競争原理のもとでは、弱いところを見せられない。でも、その原理を適用できるのは、ごく一部の領域にしかすぎないのではないか。勝ち負けではなく、「話をする/聴く」「なんとなく一緒にいる」「笑いあう」「お互いの違いを知る」そんなことが大事でうれしい場面が、私たちの日常にはたくさんある。

Mさんのような方には、競争原理に押しつぶされそうな私たちに、それ以外の領域の大切さを感じさせてくれる力がある。その力を受け取ったら、それを自分のためだけに消費するのではなく、次の誰かに贈れるような、そんな人間でありたいと思った。