知りたい:見知らぬ誰かにお芝居を贈る「寄付チケ」

知りたい:見知らぬ誰かにお芝居を贈る「寄付チケ」

6月上旬、関西で掲出された「毎月50万円もらって毎日生きがいのない生活を送るか、30万円だけど仕事に行くのが楽しみで仕方がないという生活と、どっちがいいか」という車内吊り広告が炎上した。やりがいとお金の問題は、働く大人みんなの関心事であり悩みなのだ。かかわる人々を魅了してやまないアートの世界も同じ。精魂込めた作品をたくさんの人に届けたい、そして資金の問題をクリアしたい・・・マネジメント担当の頭は常にそれでパツパツだ。その2つを同時にかなえるかもしれない「寄付チケ」という取り組みがあるという。NPO法人劇団サードクォーターで制作をつとめる聡美杏さんに聞いた。(古川晶子


―「寄付チケ」とはどんな取り組みですか?参加する人は何をしたらいいのでしょう?

劇団からチケットを買うだけ(笑)ただし、ご自分が観劇するためではなく、誰かがお芝居を楽しむ分を劇団に託していただくというものです。

―誰か、というのは家族や友人、ではないんですね。どこからの着想ですか?

まったく見知らぬ誰かです。欧米では「pay it forward」というそうで、2014年に米国のスターバックスで、お客さんが自分の後に来店した別の方にコーヒーをおごる行為がブームになったというニュースで知りました。そのときは、2日間で750人が他人にコーヒーをおごったそうです。

―ムーブメントになったということですね。「寄付チケ」はそれをお芝居のチケットの形で贈る、ということですか?

そうです。ある写真家さんが「やってみたら?」と勧めてくれました。「シェアチケット」とも言うそうです。見知らぬ誰か、っていうところが面白いと思って。ただ「ペイフォワード」や「シェアチケット」だと、意味が分かりにくいかなと思い、劇団で「寄付チケ」という名前をつけました。

―いま、販売中の「寄付チケ」はありますか?

7月に予定している、チビゲキvol.3「三びきのやぎのがらがらどん」で販売しています。0歳から参加できる音楽劇で、チケットの金額は、大人1000円・こども500円です。今回の「寄付チケ」は、劇場に来られない事情のある子どもたちやその保護者の方々に、お芝居を届けるために活用する予定です。

―「寄付チケ」のような取り組みは、お芝居の世界ではよくあるのですか?

他では聞いたことないです。招待券というのは昔からあったけど、それは対象がはっきりしていて、見知らぬ誰か、とは別のもの。「寄付チケ」は、劇団ではなく、お客さんがほかのお客さんにお芝居をプレゼントする仕組みです。劇団とお芝居を通して、人の輪が広がっていったらすてきだな、と思っています。

―すてきですね。人の輪が広がる、とはどんなことですか?

まず、寄付チケ購入には劇団からささやかなお礼をしたいと思っています。次の公演で「登場人物にお名前をいただく」というものですが、命名権もあり(笑) 公演パンフなどでもご紹介します。
もちろん「寄付チケ」がどんな風に活用されたか、もお知らせします。形式や公開の範囲がまだ確定していないのですが、お知らせすることで「寄付チケ」購入と活用を、どちらも「やってよかった」と思っていただけるようなものにしたいです。そしてできれば「お芝居っていいな」「この劇団好きだな」と思っていただけたらなおうれしいです。

―ちなみに、次の公演というのは?

11月に彩の国さいたま芸術劇場で『松本商店街 芝居始めました』を上演します。シャッター商店街の活性化の為、芝居を起爆剤にしようと、商店主たちが立ち上がる物語です。あなたのお名前をぜひ舞台に!


劇団サードクォーターは地元密着で活動し、社会的課題をテーマとする作品を多く上演してきた。「寄付チケ」はそのような劇団だからこその着想だ。ネットの動画があふれる情報社会だが、演者と観客の一体感を味わえるお芝居の良さは、日頃、抱えているものがある人ほど必要なのかもしれない。そんな誰かにお芝居を届ける「寄付チケ」を買って、人の輪に参加してみてはいかがだろうか。

NPO法人劇団サードクォーター公式サイト