Vol.34 若尾明子さん|NPO法人クッキープロジェクト代表理事

NPO法人クッキープロジェクト代表理事を務める若尾さん。障がいのある人もない人も、いろいろな人がまぜこぜになって暮らす社会をつくるために、いろいろな「しかけ」をしていらっしゃいます。活動に対する思いや、今後の展望などをお聞きしました。

―クッキープロジェクトについて教えてください。
2007年にNPO法人ハンズオン埼玉のプロジェクトとしてスタートしました。コンセプトは「まぜこぜ」です。同じ社会の中に生きることをクッキー生地に例えて、「まぜて、焼いたら、あら、なかよし!いっしょに『まぜこぜ』しておいしい社会をつくりませんか」というキャッチコピーを掲げています。2010年に任意団体クッキープロジェクトとして独立し、2016年にNPO法人クッキープロジェクトとなりました。

主な活動の柱は3つです。1つめは「福祉の商品でまちづくり事業」、福祉作業所等と協働で、商品開発講座や「クッキーバザール」というイベントを開催しています。
2つめ「障がい者の社会参加プログラム開発事業」では、「デコッパ卓球選手権」というイベントを毎年10月に開催しています。スリッパをデコレーションしてラケット代わりにつかう卓球で、障害の有無、スポーツの得意不得意、体格の違いなどが勝敗を左右しない、やってみないとわからないところに面白さがある競技です。

3つめは「企業の社会貢献プログラム開発事業」で、オフィスの一角やお店のレジ横に「置きクッキー」スペースを設置させてもらい、福祉作業所等の製品の販路拡大に取り組んでいます。

最近の展開としては、埼玉県立小児医療センターの中に初の常設店舗「おかし屋マーブル」を出店しました。埼玉県内の福祉作業所の商品を中心にお菓子や雑貨、パンなどの販売をしています。

―常設店舗は画期的ですね。「おかし屋マーブル」の由来を教えてください。
クッキープロジェクトのキャラクター「まぜこぜ名人マーブルちゃん」からのネーミングです。障がいのある人、ない人、病気の子ども、働く大人、フリーターやニート・・・色んな人が出会う、マーブル模様のようなお店を作りたいという思いで命名しました。お互いがお互いを引き立て合う存在となって、地域の中で励まし励まされながら生きる社会を作りたいという願いを込めています。

まぜこぜ名人マーブルちゃん

「おかし屋マーブル」は、お店のおばちゃんと買いに来た子どもが交流していた昔の駄菓子屋さんのような居場所にしたいです。通院は親にも子どもにも負担なもの。そんな時に、「がんばったからお菓子買い行こう!」という楽しみや、そこで交わす会話を楽しみにしてもらえるような存在になりたいと思います。

―若尾さんは、どのような経緯でクッキープロジェクトに携わるようになったのですか?
大学を卒業後、NTTグループの企業に3年間勤めていました。ある日、大学の時の先生からの紹介で、介護事業に関する講座に参加しました。その講座では、いろんな立場の人がそれぞれの考えを出し合い話あう時間がありました。それがとっても新鮮で、自分の考えを発表したり、いろんな意見の中から何かを作り出したりすることにとても興味をもちました。会社の仕事とは真逆の事だったので、そのギャップがとても新鮮でした。その時に、先生から「さいたまNPOセンターという団体で仕事の募集があるけれど、やってみたらどうか」と提案がありました。ただ、返事は次の日までにといわれて、びっくりはしましたが、結局、転職を決めました。そのころ、お世話になっていた上司が突然亡くなるという出来事があり、自分の人生について考えていて、「やりたいことは後回しにせずやっていきたい」という思いがあったので・・・。
その後、NPO法人ハンズオン埼玉に移って事務局長をつとめ、そこで始めたクッキープロジェクトが、活動見直しの際に独立した事業となり、別団体ができました。

―もともと市民活動に興味があったのですか?
大学のとき、家政学部で、家政経済学という、経済の視点から「生活問題」を解決する方法を探る学問を専攻しました。卒論の準備では、今でいうNPOのようなボランティアグループとかかわりを持って、特に高齢者福祉の分野で活動している方々と交流しました。24時間の介護ヘルパー派遣をしている事業所などで、行政の施策が届かない「すき間」で活動している方々との出会いがありました。今思えば、そのころから「まぜこぜ」で話をして何かを作り上げていくことに興味がありました。

―「まぜこぜの社会」のイメージについて教えてください
いろんな人がまざり合って、新しい発見をする社会です。障がいのある人を「やってあげる」「助けてあげる」対象としてかかわるのではなく、できることは本人が自分でするので、できないことを支えるための工夫をする、というかかわり方が当たり前な社会です。
介護保険の実態調査をお手伝いしたことがあります。アンケートの結果は「満足」が8割でした。ですが、調査員との交流の中では、決して満足とは言えないような話が出てきます。この時、専門家のかかわりという一つの視点からでは把握しきれないものがあることに気づかされました。また、街のトイレマップを作成したときには、地図を完成させるだけでなく、そこから障がいのある方々の困りを知ることにつながるという体験をしました。
多職種や様々な年代・立場の人が出会うことで、多様な視点が生れ、そこから本当に必要とすることが見えてくると思います。

―クッキープロジェクトの活動で、若尾さんはどのような役割を担っていますか?
「スピーカー」であることと、人をつなぐ役割です。私は電話や対面で話すことは苦ではないので、そういう強みを活かして・・・といっても、「まぜこぜ」の社会のための活動なので、自分だけでがんばらず、誰かに頼り切るのでもなく、いろんな視点で問題解決を行うことを大切にしていきたいです。
例えば、作業所のクッキーづくりで、プロがレシピ提供やパッケージデザインでコラボする、という場合があります。できあがった商品は現状より売れることが期待できますが、そこに携わっている作り手や支援者の思いが弱まってしまう。クッキーひとつできあがるまでに、作り手の努力やそれを支える支援員さんのサポートといった、ストーリーがあります。そういうものを大切にしたいです。
ある作業所のクッキーのロゴは、利用者さんが描いています。あまり表情が動かないように見える方ですが、作業所に通ってクッキーを作ることをとても楽しみにされていて、その気持ちがロゴにも表れています。普段のおとなしい様子からはなかなか想像できない、カラフルな色合いと跳ねるような文字から、作業所に通ってクッキーを作ることを心から楽しみにしている様子が伝わるんです。
そういう一人ひとりの手を介して作られている製品であることを伝えていきたい。そのためには、作業所と企業をつなぐ役、製品をお客さんに届ける役として、お互いを知り合うための「もう一歩」をつなぐ役割でありたいと思っています。

<インタビューを終えて>
「まぜこぜ」であることをこころから楽しむ若尾さん。人と関わることが本当に好きなんだということが伝わってきました。クッキーづくりや「デコッパ」など、いろんな人がまぜこぜになり、お互いを引き立て合えるこの仕組みは、もっともっと拡散してほしいと思います。「デコッパ卓球選手権全国大会」ができるよう、私も活動していきたいと思いました。(森實摩利子)

<若尾明子さんプロフィール>
1974年、千葉県生まれ、小学校6年まで大阪で育ち、それ以降は志木市で暮らし、現在は新座市在住。日本女子大学家政学部卒業後、NTTグループ会社に就職。3年後、さいたまNPOセンターに転職。その後、NPO法人ハンズオン埼玉にて事務局長を務めた後、2016年よりNPO法人クッキープロジェクトにて代表理事を務める。
※2017年2月の情報です

<若尾明子さんおすすめ情報>

NPO法人クッキープロジェクトHP
2017 クッキーバザール開催決定!
3月22日(水)23日(木)、浦和コルソで開催です。